【ニューヨーク不動産最前線】
賃貸か購入か

アパートは借りたほうがいいのか買ったほうがいいのか。誰もが一度は考えたことがあると思います。その人の置かれている状況や物件の種類と価格等、それぞれ異なるので究極的には答えはない問題です。同じ状況・条件だとしても賃貸が合っているのか購入が良いのかは、その人の性格にもよります。

金銭面だけで考えると、物件の値段が上がる、もしくは価値が下がらないと仮定した場合には、購入した物件は最終的には売却してお金は回収できます。タイミングが良ければ多額のキャピタルゲインも期待できます。維持費としては(モーゲージの支払いを除けば)物件が同等程度のクオリティであれば基本的に購入のほうが安くなります。維持費は、マンハッタンでもレントの半分程度で済むし、ブルックリンの新築物件なら賃貸の4分の1程度で済む場合もあります。かつ、物件を保持している間に発生する固定資産税は所得税の控除対象となるので、長期的に見ると資産形成という意味では購入した方が断然お得です。

モーゲージを組んだ場合には、モーゲージの額によっては毎月の維持費がレントを上回る場合もありますが、モーゲージの支払いのうち金利部分も所得税控除の対象となり、結果的には支出を抑えるのに役立っています。レントは何年払い続けても資産にはなりません。

ところがニューヨーク市では住民の3分の2以上が賃貸です(ちなみに全米では賃貸比率は3分の1以下です)。単純に物件の値段が高いということもあるのでしょうが、先日会社の人が賃貸の方が魅力的な理由として以下のような分析をしていたのでご紹介します。

1.3〜5年といった短期間の場合は圧倒的にレントのほうがコストが安くなる。
2.土地に馴染めるかどうかテストするにはレントがお手軽。
3.購入に充てる資金を別のところで活用できる。
4.もし急に引っ越すことになった場合のリスクが低い。賃貸の場合は最悪残りの契約期間のレントを払えば済むが、購入している場合は売却したりテナントを探したりと面倒。充分に物件が値上がりしていない場合は、キャピタルロスとなる。
5.問題が発生した場合、自分で修理する必要がなく大家にいえば良いので気が楽。
6.隣人が嫌なら我慢せず引っ越せば済む。

ニューヨークのようなビジネス都市は短期滞在者が多く、仕事の関係で数年で引っ越す人も多く常に住人が入れ替わります。また家族が増えたり減ったりするとすぐに住まいを変えるパターンが多いので、確かに賃貸はお手軽です。ただ、だからこそこの地で物件を保有するというのは価値があることなのかもしれませんね。

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柏原知子 (Tomoko Kashihara)

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

ライタープロフィール

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2021年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

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