Vol.25 中世ヨーロッパの面影を残す城塞都市
ケベック旧市街の歴史地区
− カナダ・ケベック州 −

文/齋藤春菜(Text by Haruna Saito)

世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2021年8月現在、167カ国で1154件(文化遺産897件、自然遺産218件、複合遺産39件)が登録されている。

ケベック旧市街。中央にそびえるのはお城のようなシャトー・フロントナック

カナダ東部のケベック州は、人口の80%がフランス系移民、フランス語を公用語とする異色の州。その南端にあるケベック旧市街には、17世紀にフランス人によって築かれた町並みが今も残っている。

1608年、フランスの探検家サミュエル・ド・シャンプランは大西洋を越えてこの地にたどり着き、岬に砦を築いた。この場所を拠点とし、フランスは北米に広大な植民地を獲得していく。その後、植民地建設をめぐるイギリス軍との激しい争いに破れてケベックの町はイギリス領となったが、フランス文化の香りは色濃く残された。城壁で囲まれた旧市街は4世紀経った今も保存状態が良く、町の様相は当時の建築様式や都市構造のまま。北米大陸におけるヨーロッパ人入植の歴史の重要な段階を示す町であり、北米唯一の要塞化された植民都市として高く評価され、1985年に世界文化遺産に登録された。

北米大陸におけるフランス人最古の町

中世ヨーロッパを彷彿とさせるロイヤル広場

旧市街地区は、城壁に囲まれたアッパータウンと港周辺のロウアータウンで構成されている。町のシンボルとなっているのが、アッパータウンにあるシャトー・フロントナック。高級ホテルとして知られるこの建物は、観光客を惹き寄せるためにカナダ太平洋鉄道社の社長が創案した。1893年の開業以来、各国の王族をはじめ、チャールズ・チャップリンやレオナルド・ディカプリオといった多くの著名人が訪れている。

シャトー・フロントナックのすぐ脇には、ダファリン・テラスという木造の遊歩道がある。セントローレンス川と美しい町並みを一望でき、撮影スポットとして人気。ダファリン・テラスを南に向かって岬まで行くと、1820~1850年の間に建てられた星型の要塞シタデルがある。北米最大級の要塞で、現在もカナダ陸軍の駐屯地として活躍している。夏の間は午前10時に衛兵交替式を、夕方にはマスケット銃の発火とともに閉門する様子を見ることができる。そのほか、地元アーティストたちの路面店がずらりと並ぶトレゾール小路も必見だ。

城壁で囲まれたアッパータウンから港のほうへ向かうとロウアータウンがある。その中心地となっているのが、サミュエル・ド・シャンプランが最初にケベックの町を築いたといわれるロイヤル広場だ。広場を囲む家々は2・3階建の石造りで、大きな煙突や切妻屋根、小さな窓ガラスなど、フランスとイギリスそれぞれの特徴が見られる。広場の正面に建つ小さな石造りの建物はノートルダム聖堂。植民地をめぐる戦いで劣勢だったフランス軍が2度もイギリス軍を退却に追い込んだことを記念して、「勝利のノートルダム聖堂」とも呼ばれている。広場を囲む一帯はプチ・シャンプラン地区と呼ばれ、古い家並みの間を縫うように石畳の路地が伸び、まるでお伽話の世界に迷い込んだかのようだ。ブティックや雑貨店、レストランなどが軒を連ね、みやげ物探しや散策におすすめ。

ブティックや雑貨店で掘り出し物を見つけよう

遺産プロフィール
ケベック旧市街の歴史地区
Historic District of Old Québec

登録年 1985年
遺産種別 世界文化遺産
www.quebec-cite.com/en

 

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齋藤春菜 (Haruna Saito)

齋藤春菜 (Haruna Saito)

ライタープロフィール

物流会社で営業職、出版社で旅行雑誌の編集職を経て渡米。思い立ったら国内外を問わずふらりと旅に出ては、その地の文化や人々、景色を写真に収めて歩く。世界遺産検定1級所持。

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