歴史だけじゃない、ボストンの魅力

世界に名だたる観光地だけれども、ほかの人にその良さを伝えにくい場所があります。私にとってはボストンがそれです。アメリカ合衆国の歴史に不可欠な都市を、あえて歴史に触れず、映画とスポーツでボストンを紹介したいと思います。

ボストンの町

ボストンを舞台にした映画は数多くあります。社会派で重厚な作品の印象があるだけでなく、実際にアカデミー賞候補になったり、受賞したりしています。

約20年の間に思いつくだけでも、1997年の『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』が脚本賞と助演男優賞、2004年の『ミスティック・リバー』では主演と助演男優賞、ボストンのアイリッシュ系マフィアを描いた2006年『ディパーテッド』で作品賞、監督賞を含め4部門を受賞。そして2015年、『スポットライト 世紀のスクープ』でボストン・グローブ誌の記者がカソリック教会の司教の性犯罪を暴く過程を描いた映画で作品賞と脚本賞を受賞したのは、記憶に新しいところです。

『グッド・ウィル・ハンティング』のロケ地、ボストン・パブリック・ガーデン

その反対に、ボストンはコメディ映画の宝庫でもあります。笑える映画といえば、ロサンゼルスから恋人を取り戻すためにはるばるハーバード・ロースクールにやってきた主人公が、カリフォルニアとボストンの違いに悩みながらも活躍する2001年の『キューティー・ブロンド』。クマのぬいぐるみテッドが大活躍する2012年の『テッド』と2015年の続編『テッド2』。

なかでも『テッド2』ではプロフットボール、ニューイングランド・ペイトリオッツのスター選手の“あるもの”を盗みに行ったり、テッドを追いかけるストーカーが大リーグ、ボストン・レッドソックスの8回裏にかかる応援歌“スイート・キャロライン”を歌い出すと、隠れているにも関わらず反射的に“バッバッバー”という合いの手を入れてしまったりという、生粋のボストン人ならではの気質が描かれています。

ハーバードヤード

テッドのように、ボストンの人はスポーツ好きが骨の髄まで染みついている人が多いようです。プロバスケチーム、ボストン・セルティックスが好きすぎて大騒動を起こしてしまうファンを描いた1996年の『ダンク・ブラザース/脱線ファンにご用心』、大事な彼女そっちのけでレッドソックスの応援をしてしまう2005年の作品『2年目のキス』。ボストンのアイスホッケー大好き人間がひょんなことからゴルファーに転身する1996年の『俺は飛ばし屋/プロゴルファー・ギル』など、枚挙に暇がありません。

そのなかでもボストンのスポーツの聖地といえば、1912年創立のアメリカ最古のプロ野球場「フェンウェイ・パーク」。2004年にバンビーノの呪い(若手実力派二刀流のベーブ・ルースをライバルのニューヨーク・ヤンキースにトレードしたために優勝から遠ざかったとされています)から解き放たれるまでは、毎日超満員なのに86年(!)も優勝できなかったファン泣かせのチームでした。その後は2004年、2007年、2013年、2018年と4回も優勝、日本人選手も数多く所属し、日本でも有名になりました。

FP中

そのフェンウェイ・パークは、ケビン・コスナー主演の1989年の作品『フィールド・オブ・ドリームス』や2011年の『マネー・ボール』の重要な場面でも出てきます。もちろん『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』『2年目のキス』にも出てきます!

変形球場でレフト側に異様に高いフェンスがあり、グリーンモンスターと呼ばれています。熱烈なファン、レッドソックスが大好きだけどちょっと冷めたファンなどで観客席はいつも満員。それどころか、フェンウェイ・パークの周りのグッズのお店や何軒もあるBARも熱気でムンムン。そのエリアはレッド・ソックス・ネーションと呼ばれるだけのことはあります。レフトの場外に見える石油会社CITGOの看板もお見逃しなく!

FP外

七十余年の歴史を持つNBAで、17回の最多優勝数を誇るのがボストン・セルティックスです(セルティックとはアイルランド、ウェールズ、スコットランドなど、起源を持つケルト人のこと)。プロバスケの名勝負を繰り広げたボストン・ガーデンはスポンサーの関係でTDガーデンと名前を変えていますが、セルティックスは今もプレーオフの常連チームです。

町の中心部にあるクインシー・マーケットには、第一次黄金時代のヘッドコーチのレッド・アウアーバックや第二次黄金時代の名プレイヤーであるラリー・バードのシューズ、市役所の中庭にはNBA史上最高のセンターといわれているビル・ラッセルの銅像が誇らしげに立っています。イギリス系やイタリア系だけでなく、ケルト人の多いこの町ではセルティックスも大人気です!

ビル・ラッセル

ラリーバード

レッド・アウアーバック

スポーツといえば、1897年から続くボストン・マラソンもあります。ボストン・マラソンはアマチュアランナーにとっては最高峰の大会。18〜34歳は男子で3時間以内、女子で3時間30分以内、50~54歳でも男子が3時間25分、女子が3時間55分、80歳以上でもなんと男子で4時間50分以内、女子で5時間30分以内の記録を持っていないと参加すらできない、とてもハードルの高いレースだそうです(時間は2020年のフルマラソンの規定を参考にしています)。

マラソン好きの知り合いは、友人からもらった“ボストン・マラソン完走!”のTシャツを着て町を走っていると、「ボストンマラソンを走ったのか、すごいな」「早く走るコツを教えてくれ」などと周りからやたらと声をかけられて、ボストン・マラソンを走るということがいかにすごいことかを思い知らされ、それ以来そのTシャツを着られなくなったとか。ボストン・マラソンのゴール地点は、ボイルストン通りの公立図書館の前にあります。

Finish Line

ボストンといえば、ボートも有名です。特にシーズンでなくても、ボストンと向かいの学園都市ケンブリッジの間にあるチャールズ川では、毎日のように練習風景が見られます。秋はフットボールのシーズン真っ只中ですが、10月の後半の週末2日間は、ボストンはボート一色になるそうです。2日間でなんと1万1000人、1900艇が出場し、61ものイベントが行われる「HEAD OF THE CHARLES REGATTA」。22万5000人が観客となり、経済効果は7200万ドル(約80億円)! ボストンの人のスポーツ好きは、もはやとどまるところを知りません。

レガッタの練習風景

昔も今もボストンは歴史や学生の町ですが、映画やスポーツとも切っても切り離せない町です。映画で見た町並みや風景、熱くてクールなスポーツ観戦を、ボストンで体験してみてはいかがですか?

州議事堂

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石井光 (Ishii Akira)

石井光 (Ishii Akira)

ライタープロフィール

旅行会社勤務。広島出身。在米12年。ジョージア、ウィスコンシン、ニュージャージー、テキサス、カリフォルニア、ワシントン州を経て、現在2度目のニュージャージー生活。その間アメリカの都会から地方まで40州200都市以上を訪問。あるときは真正面から、またあるときは裏側から、アメリカ各地をご紹介します。

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