オンライン講義で出会いがない!

文&写真/福田恵子(Text and photo by Keiko Fukuda)

アパートの共同スペースのキッチン。使いやすそう

ニナが大学に入学したのは2020年秋、パンデミックの最中だった。安全面を考慮して全てがオンライン授業となった結果、入居が決まっていた寮の契約を解除し、ニナは1年間自宅から授業を受けた。そして、2021年の秋、待ちに待ったキャンパスでの生活が始まった。寮の部屋は1年生に優先的に権利があるため、2年生のニナはキャンパス内のアパートに入居することになった。

3寝室のアパートを4人の女子大生でシェアをするわけだが、シングルルームを独占する場合、1カ月の部屋代は1000ドル、ツインルームに2人で住む場合、800ドル。そしてニナは私に相談せずにツインを選んだ。「200ドルの差ならシングルにしたほうが良かったのでは?」と私が言うと、ニナは「200ドルの差でも1年分だと大きな差になる。私は相部屋で大丈夫」との返事。母親に備わっていない、その経済観念は一体どこから来たのだろう?

そして9月の入居日、自宅から50分かかる大学まで私の運転で向かった。まずは巨大な駐車場ビルの中でPCR検査を受けた後、アパートの近くで学生ボランティアから鍵を受け取ると荷物を車から運び出していざ部屋へ。建物はカリフォルニアらしい明るい外観のコンドミニアム風だった。部屋に入ると正面に共同スペースのキッチンとリビングルームがあり、右側に2部屋の寝室、左側にニナとルームメイトが暮らすバスルーム付きの寝室があった。

ニナのルームメイトはまだ入居していなかったが、それぞれのベッドと勉強机とタンスが部屋の両脇に設置され、さらに各自に専用のウォークインクローゼットまである。窓からは南カリフォルニアの陽光が差し込み、私の目からは理想的な居住空間に見えた。

勉強より大切なこと?

キャンパスに引っ越したニナだが、授業は引き続きオンラインのみ。次のセメスターで選択した授業がハイブリッドや対面式ならクラスルームに足を運ぶことになるが、2021年12月末現在までは、一度も対面式授業の経験がない。つまり、大学での新しい出会いもまだない、ということなのだ。

日本での数十年前のみずからの大学生活を振り返ると、勉学よりも日本中から集まってきた同級生やクラブ活動を通じて知り合った先輩たちとの交流が生活の中心だった。当時はオンライン講義なんてもちろんなかったし、せっせと教室や部室に通って皆と顔を合わせていた。しかも講義が終わったらそのまま大学に近かった吉祥寺に出かけ、お茶をしたり映画を見たりして、ずっと「誰かと一緒」だった記憶しかない。

それなのに、ニナをはじめとして、今オンライン授業を受けている学生たちは、「長い目で見たら、もしかしたら勉強よりも大切なこと」を経験する機会を奪われているようにも思う。ちなみに2021年9月の時点で、「オンライン受講生」は全米の大学生の半数を占めるそうだ。

今のところ、ニナの大学での新しい出会いの相手はルームメイトのみ。大学のネット掲示板を見ると、非常識なルームメイトに当たってしまった悲劇なども書き込まれているとか。しかし、キャンパス内のアパートも寮も供給不足なので、部屋を替えたいとマネージメント側に言ってもその望みが叶う可能性はほぼゼロらしい。その点、ニナのルームメイトは「とても優しくて常識人」なのだという。すでに2年目の半ばに差しかかろうとしているニナの大学生活、今後、状況が改善し、新しい友人との出会いに恵まれることを願うばかりだ。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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