2023年 攻めから守りの人事へ 〜人材定着の重要性〜

パンデミックを機に激動の時代を過ごした人類。ご多聞に漏れず、HR業界にとっても波乱の三年間でした。

2021年には“Great Resignation(大辞職時代 )”という造語が出現し、波乱の離職劇を生き延びるべく人事の皆様は対応に明け暮れたことかと思います。

それから一年半の時が過ぎた現在。
昨今の企業努力の矢印は「人材獲得(Talent Acquisition | タレント・アクイジション)」から「人材定着(Employee Retention | エンプロイー・リテンション)」へ変わったと言われています。

今回の記事では、人材定着について詳しく解説していきます。

1. Employee Retentionとは

人材定着の重要性

以下は、従業員管理プラットフォームを運営するLattice社による調査結果です。

HR分野において過去一年で人材獲得の優先度が著しく下がり、確実な意識の変化があったことが見てとれますね。獲得競争に成功したとしても、そのタレントがすぐに他社へ流れてしまったら元も子もありません。優秀なタレントをいかに維持するか、がこれからのキーと言えそうです。

数字で見る人材定着

米国では、以下を指標として企業の人員の入れ替わりを測ることが一般的です。

人材定着率 ※Retantion Rate(リテンションレート | Retain=保持する)
[ 測定終了時の従業員数 ÷  測定開始時の従業員数 ] x 100
例:8人中6人が勤続している場合  75% = (6÷8) x 100

離職率 ※Turnover Rate(ターンオーバーレート | Turnover=回転する)
[ 測定期間中の退職者数 ÷  測定開始時の従業員数] x 100
例:8人中2人が退職している場合  25% = (2÷8) x 100

一般論として、人材定着率 90%以上・離職率 10%以下であることが好ましいとされています。
皆様の会社はいかがでしょうか?一度ぜひ計算してみてください。

2. 人材定着の為にできること

求人プラットフォームを運営するiHireが、こんな興味深い調査結果を発表しています。

雇用主が聞いている退職理由と、実際の従業員の心の内は、どうやら必ずしも一致していないようですね。

社員から聞く話だけを鵜呑みにしていては、人材の定着率を維持・向上は難しいのかもしれません。
本当に効果的な策は何なのでしょうか。考えられるものをいくつかご紹介しましょう。

第一印象が要!オンボーディングの充実化

”オンボーディング”とは、船や飛行機への搭乗を意味する”On-board”から派生した言葉で、新入社員の入社手続きから一人立ちまでの一連のプロセスを指します。

「なぜ従業員の定着に、入社手続きが関係するの?」と疑問に思われる方もいるかもしれませんね。
以下のような面白いデータが存在しますのでご紹介しましょう。

5人に1人の労働者が、入社して1週間〜3ヶ月以内に退職している。
86%の労働者が、入社して3ヶ月以内に、その会社に長期的に勤務したいかどうかの結論を出している。

参照:SHRM

「第一印象が重要」というルールは人事・組織管理にも当てはまる、普遍の鉄則と言って良さそうです。
オンボーディングに関連する詳しい解説は、またの機会にご紹介させていただきます。

お金は万能薬?!給与の見直し

とても現実的なテーマではありますが、やはりお金は一番のモチベーターであると断言できそうです。

少し前までトピックとなっていた「フレキシビリティー」や「ベネフィットの充実」は意外にも順位が高くなく驚きました。おそらくこれらは既に”あって当たり前”なものとして認識されており、昨今は”目に見えわかりやすい報酬”を求める動きがあるのかもしれません。

愛社精神は効果大!従業員エンゲージメントの向上

”従業員エンゲージメント”とは、従業員が企業の方向性に共感し、自発的に貢献したいと思う意欲のことを指します。会社への「愛着」「信頼」「帰属意識」だとイメージいただくといいかと思います。

従業員エンゲージメントを上げる方法は百人百様ではありますが、一般的には以下のような施作が推奨されています。

ボトムアップ、かつ双方向な意思決定何事も、土台が命。従業員サーベイを実施するなど、社員が自分の声を発する機会を持つことは、”尊重されている”という意識に繋がるはずです。また、秘密主義的かつ一方通行な経営は疎外感を生む原因ともなります。透明性を持ち、インタラクティブな環境を意識してみては。
業績を認識し、評価する従業員評価プラットフォームを導入するなど、社員の功績を讃える体制を整えてみるのも効果的かもしれません。いきなり大がかりな事は難しい、という場合は「お疲れ様」「ありがとう」など小さな称賛の声掛けからはじめてみてはいかがでしょうか。自分の頑張りが認められているという喜び、ひいては仕事そのものへのやりがいや充実感など大きなインパクトをもたらすはずです。
個人の成長に投資し、サクセスロードマップを共に描く従業員はロボットではなく、一人の人間。当たり前のことですが、日々の仕事の中で忘れがちなことかもしれませんね。社員一人一人が、一個人として成長できる場や機会を用意し、長い目で見たキャリアアップを応援することは、会社への忠誠心に結びつくのではないでしょうか。

転職支援をする我々がこんなことをお伝えすると驚かれるかもしれませんが、、、やはり働く皆様には、ハッピーな環境で、少しでも長くお仕事をして欲しいと願っています。また企業の皆様にも、優秀な人材を失ってほしくはありません。人事定着が肝となるこれからのHR業界。その動向から目が離せませんね。

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ロサンゼルスを拠点とし、アメリカ全土を対象にHR・人材ソリューションを提供するリクルーティングエージェンシー。
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