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海外教育Navi 第113回
〜日本語、英語ともに中途半端のままで帰国になったら〜〈前編〉
- 2023年1月2日

Q.インターナショナルスクールに通っていますが、英語も日本語も中途半端なままでの帰国になりそうです。どうしたらいいのでしょうか。
今回は、臨床心理士の視点から、海外生活でのお子さんの支援についてお話しさせていただこうと思います。
帰国生の学力は十人十色
一概に「帰国生」といっても、海外滞在年数や在籍していた学校により「帰国時の学力」は十人十色です。特に通っていた学校の教授言語や出国時の年齢により、帰国時の学力に違いが生まれます。
今回のようにインターナショナルスクールや現地校に就学していた場合には、外国語ばかりでなく日本語や日本の勉強の習得も思うようにいかず帰国するケースも珍しくありません。
そこでここでは、このような状態での帰国にならないための「滞在中の対策」と、不本意ながらどちらの言語も中途半端なままで帰国した場合の「帰国後の対策」についてお答えします。
転ばぬ先の杖
はじめに、滞在中に気をつけておきたいことを英語力と日本語力習得の視点からお伝えします。
学習言語の習得は時間がかかる出国前の教育相談では、「せっかく海外に行くのだから子どもを日本語と英語のバイリンガルに育てたい」という保護者の思いを多く聞きます。うまくいく場合もありますが、思うようにいかないまま帰国する場合もあります。
そのおもな理由として、会話レベルの「生活言語」としての英語力は比較的早く習得できますが、授業を理解するために必要な「学習言語」の習得が思うように進まないことが挙げられます。

図1の「言語の伸びと後退」の通り、現地校やインターナショナルスクールの授業に適応するためには通常3年から5年かかります。一般的に、子どもの帯同期間が3年から5年という現状を考えると、学習に適応するための英語力を十分に身につけることなく帰国になることは仕方のないことなのかもしれません。
そこで滞在中はまず、「生活言語」の習得を第一に考え、学校生活に適応するなかで学年相応の学習言語としての英語力を獲得していくことが基本的な対策となります。
日本語力や日本の勉強は継続が大切
図2の通り、正常な母語の成長では、各年齢に応じてタイムリーに日本語(母語)を育んでいくことが求められます。しかし渡航直後の保護者や子どもにとっては、就学した現地校やインターナショナルスクールへの適応が大きな課題となりますので、日本語の習得や日本の学習を疎かにしてしまう傾向があります。
この結果、「年齢相応の日本語力を身につけていないままでの帰国」になってしまうのです。
このようなことにならないためには、家庭で「両言語を使い分ける環境」を構築したり補習校等で「母語での学習を継続」したりする環境を構築しておくことが重要な対策となります。
帰国後はキャッチアップとブラッシュアップ
「日本語も英語も中途半端な帰国」になってしまったら心配な状態ですので、至急対策を取らなくてはなりません。
帰国後は日本の学校への適応を考え、日本語や日本の勉強のキャッチアップをはかることが緊急の対策となります。
また、せっかく苦労して身につけた英語力をブラッシュアップさせていくことも重要です。
次回の後編では、帰国時を「就学前」「小学生」「中学・高校生」の3つの学齢に分け、それぞれの対策について具体的にお答えします。
※次回に続きます。次回記事は1月15日(日)に掲載予定です。
海外子女教育振興財団 教育アドバイザー
平 彰夫
千葉県の公立小学校で教頭、校長を歴任。千葉県小学校長会理事、千葉県海外子女教育国際理解教育研究会副会長を経験。1998年より3年間、デュッセルドルフ日本人学校に教頭として赴任。この間、補習教室の教頭を兼任。2011年4月より海外子女教育振興財団の教育相談員。
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