交通事故・人身事故 弁護士への依頼

情報提供/Kimura London & White LLP パラリーガル・満田いずみ

アメリカでは事故に遭い怪我をした場合、弁護士に依頼することが一般的です。しかし日本にはそういった習慣がないため、日本人はお金を請求することに抵抗を感じたり、お金ではなく非がある相手に心からの謝罪をして欲しいと考えたりしがちですが、残念ながら法律の力で相手に謝罪をさせることはできません。そのため、過失のある相手からは保険金を受け取ることが唯一の解決方法となります。

弁護士に依頼するメリット

事故による損害が生じた場合、一般的にはまず当事者が自分自身の保険会社に連絡し、詳しい情報を伝えます。その後、双方の保険会社が連携して過失割合を調査し、過失があった側の保険会社が保険金を支払います。このように、弁護士を介さなくても保険金を受け取ることができるのに、アメリカではなぜ弁護士を雇うことが一般的なのでしょうか。それは弁護士を介すれば平均3.5倍の保険金が支払われるため、弁護士報酬を差し引いたとしても結果的に高額の保険金が支払われることが実績として明らかになっているからです。(https://www.insurance-research.org/) 

加えて、過失がない場合には弁護士と成功報酬で依頼することが可能なので、契約時には何も支払う必要がありません。そして、警察や州のハイウェイ・パトロールからの事故レポートの入手、怪我の程度を証明するために必要な診療記録や医療機関からの請求書のコピーの請求、相手の保険会社のClaim Adjuster(損害査定人)とのやり取り、保険金の受給額の交渉などのすべてを任せることができます。自社の加入者の過失によって被害者に保険金を支払う必要が生じた場合、保険会社は可能な限り低い額で抑えられるよう交渉することが仕事ですが、この時弁護士を雇っていなければ相手側の保険会社とも自分自身が直接対応しなければならなくなります。専門家であるClaim Adjusterを相手に一般人が有利に交渉を進めることは非常に困難ですし、提示された金額をそれが相場なのだと考えたり、もらえるだけありがたいと考えたり、面倒であったりしてあっさり承諾してしまう場合がほとんどです。一方で、弁護士はほとんどの場合カウンターオファーを提示しクライアントにとって有利になるよう交渉を行うため、弁護士が入ったというだけでClaim Adjusterが提示額を引き上げることは決して珍しくありません。

弁護士に依頼すると裁判になりますか?

事故による怪我や損害が生じた場合に弁護士を雇ったからといって、相手に対して裁判を起こすというわけではありません。弁護士を雇うのは自分自身の代理人として相手側保険会社と交渉をしてもらうことが主な目的で、裁判になることは非常に稀です。和解金の交渉は事故による怪我の治療がすべて終わり、治療費などの損害額が確定してから行われますが、ほとんどの場合それから数週間で和解が成立します。

弁護士に依頼するといくら受け取ることができますか?

成功報酬で弁護士と契約をした場合、弁護士は和解金として支払われる金額のうち約3分の1を報酬として受け取ります。医療機関への支払いが残っていれば和解金の中から清算されますが、依頼者も最低でも和解金の3分の1を受け取ります。

また、事故による治療費だけでなく目に見えない苦痛についても損害として請求することができ、それ以外にも通院にかかった費用や欠勤や休業で生じた減収、通院のために欠勤した場合の休業損害についても相手側に請求可能です。

ただし、相手が保険に入ってなかったり、入っていても支払い限度額が低かったりして十分な保険金が支払われないことは決して珍しくありません。そのためご自身の保険で不足分を補えるUIM補償をしっかりつけておくことが大切です。

Kimura London & White LLP

交通事故・人身事故、契約関連・雇用・ビジネス上のトラブル、民事訴訟、エステートプラン(リビングトラス・遺言書・委任状)の作成。日本語の書類の公証(Notary)- 遺産相続関連や年金申請など。
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