アメリカの法律最前線

移民・非移民ビザ、交通事故、企業法……日本とは異なるアメリカの法律を理解しておくことは、アメリカ生活においては大切なこと。本特集では、生活に役立つアメリカの法律最新情報を解説する。

移民法

永住権(グリーンカード)

永住権の取得は、結婚による申請や雇用による申請、抽選や自己能力による申請など方法がいくつか存在する。特に関心の高い2つの申請方法について見ていこう。

雇用主のスポンサーによる申請

申請条件は主に以下のカテゴリに分かれます(以下以外もあります)。

第一優先:高度な特殊能力保持者、あるいは国際間企業の管理職者
第二優先:修士号保持者、または学士号+5年以上の職歴保持者
第三優先:学士号保持者、または2年以上の職歴保持者

申請時のポイントは、(条件や目的において)自分に合った申請の戦略を立てることです。グリーンカードの申請は時間がかかるため、多くの方々の傾向としてどうしても目の前のビザ·ステータスに捉われ、グリーンカードの申請を後回しにしがちです。まずはグリーンカードの申請計画を先に立て、その取得までの時間をどのように、どの種類のビザ·ステータスで滞在するかの計画を立てることが、結果的に多くの時間と費用を軽減することに繋がると考えます。

現在の傾向として、アフターコロナ、特にバイデン政権への交代後から審査基準はかなり緩和されてきました。具体的には移民局(USCIS)からの追加資料の請求や却下率の減少が挙げられます。トランプ政権下においては全員面接制が謳われ、ほとんどのケースで面接を受けなければならない時期がありましたが、最近では移民局の極度の人手不足のため、面接が免除されるケースが多々あります(これはアメリカの場合で、日本での面接は免除されません)。

配偶者・家族のスポンサーによる申請

申請条件は、申請者がアメリカ市民やグリーンカード保持者の配偶者、親(市民権の場合のみ)、子供、兄弟姉妹(市民権の場合のみ)であることです。取得までの待ち時間はカテゴリにより大幅に変わります。

家族申請は離れている家族が同居することを目的としています。ここで問題となるのが、日本で申請を行うのかアメリカで申請を行うのかという点です。一般的に日本で申請を行うほうが時間を要する場合が多いですが、アメリカで申請を行う場合のデメリットもあります(アメリカから出国できない期間がある等)。家族が一緒に生活できる環境をできる限り早く作るため、賢明な計画を立てることが重要だと考えます。また、カテゴリによっては手続きに何年も要する場合があります。時間を要するがゆえに後回しにしたり諦めたりしがちですが、後に後悔する方々を多く見ています。申請の途中で放棄することは簡単にできるので、申請だけでも行っておくことが重要と言えるでしょう。

最近の傾向として、コロナの間、日本とアメリカで離れ離れになっていたカップルがコロナ対策緩和により結婚する傾向が強くなっており、家族申請の数が著しく増えていると感じます。移民局の人手不足も加わり、米国籍保持者との結婚のケースでも審査に1年半以上掛かるケースも見られます。

Oビザ

Oビザは3つのカテゴリに分けられます。

  1. 科学者、教育者、ビジネスマン、およびスポーツ選手

O-1ビザのなかでもっとも厳格な審査が行われるカテゴリとされています。審査をパスするには、以下の8つの条件のうち少なくとも3つを満たしている必要があります。

(1) 国際的に認められている賞を受賞したことがある
(2) 入会するにあたり厳しい条件を課されている会の会員である
(3) 知名度のある出版物、あるいはメディアにおいて取り上げられたことがある
(4) 当該分野において競技などの審査を担当したことがある。
(5) 当該分野において大きな功績を残したことがある
(6) 専門雑誌、あるいは知名度のあるメディアにおいて記事を出したことがある
(7) 知名度の極めて高い団体で仕事を行っている、あるいは行った経験がある
(8) 収入が著しく高い

  1. 芸術家、および芸能人(ただし映画、テレビ関係は除く)

前者のカテゴリよりも審査基準は低いとされています。審査をパスするには、以下の5つの条件のうち少なくとも3つを満たしている必要があります。

(1) 公の場で高い評価を受けた作品において、主な役割を果たした、あるいは果たす予定である
(2) 新聞、専門雑誌等において大々的に取り上げられた、あるいは高い評価を得た
(3) メディア等において著名な団体で主な役割を担った
(4) 多大な業績を上げた記録がある
(5) 著名な団体、評論家、政府機関、エキスパートより高い評価を受けた

  1. 映画、あるいはテレビ関係のタレント、および製作関係者

上記2つのカテゴリのような具体的な条件の列挙はなく、通常以上の極めて高い評価を受けているとされているだけです。したがって、審査は上記の2つのカテゴリに比べて広汎なものであると言えます。

Oビザ の審査は近年厳しくなっています。トランプ政権以前は有名度、著名度の証明として雑誌等の出版物に載っていること、および推薦状があれば認可されていた流れが、この2つに加えてもう1つ必要である場合が多くなりました。受賞したことがある、上位にランキングされている、給与が高い、ある作品において主要な活躍を行った、または、その他の要素が必要だといえるでしょう。一般的に多くの申請候補者は出版物に載ること、推薦状を得ることまでは条件を揃えられるのですが、もう1つ提出できるものを工夫して見つけ出すのが大きなポイントとなります。

最近の傾向として、コロナに入る2~3年前から審査が厳しくなっています。申請には最長で向こう3年間のスケジュールを提出する必要があり、コロナの間は、そのスケジュールにあるイベント等が実際に行われるのか否か、行われるとすればどのようなコロナ対策が施されているのか等が指摘されていました。トランプ政権下においてその審査基準が厳しくなり、それがコロナでさらに厳しくなりました。バイデン政権に変わった頃から審査基準は緩和され始めましたが、今でもトランプ政権下で厳しくなった審査基準のなごりがあるように思います。

取材協力
瀧法律事務所(Taki Law Offices)
瀧恵之(移民法全般)
taki@takilawoffice.com
https://www.takilawoffice.com

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