不動産のテナント、貸主間でのトラブルと注意点

情報提供/Kimura London & White LLP パラリーガル・満田いずみ

私たちは習慣や文化の違いから思わぬトラブルに巻き込まれることがあり、当事務所も多種多様なお問い合わせをいただきます。なかでも多いのが貸主とテナント間のトラブルです。離れた場所に引っ越しをする際に、Craigslistなどで見つけた個人の貸主と賃貸契約をするためデポジットを送金したあと連絡が取れなくなったケースや、退居時にセキュリティデポジットを返金してもらえないケースのほか、契約期間の途中で転居することになり、転居後も契約期間が終了するまで家賃を払い続けることになったというご相談が目立ちます。

契約書の確認

離れた場所への引っ越しのためやむを得ず物件を見ずに契約をする際、個人の貸主と賃貸契約を結ぶ場合は特に注意が必要です。貸主の氏名、勤務先や学校などを確認し、口頭で決めた条件はメールや契約書にすべて記載してもらい、記録に残しましょう。

契約時にもっとも重要なのは、契約書を読むことです。つい億劫になりがちですが、内容を理解しないまま署名することはトラブルの元です。要所となる部分には必ず目を通し、不明な点は遠慮せず質問をするほうがトラブル防止に繋がります。最近はさまざまな翻訳アプリがあり、精度も上がっているので契約の条件をしっかりと確認しましょう。契約書上で注意することとして、契約期間、サブリースの可否、セキュリティデポジット、テナントに課せられる義務、保険などが挙げられます。

・契約期間

賃貸契約期間が満了する前に退居する場合、物件をサブリースして代わりの入居者に入ってもらう方法がありますが、契約上サブリースが禁じられている場合は違約金の支払い、または残期間の家賃の支払い義務が生じます。ただ新しいテナントが入居した場合、家賃を支払う義務はなくなります。

・セキュリティデポジット

セキュリティデポジットは1、2カ月分の家賃を求められることが多いです。退去時にきちんと返金してもらえるよう、入居時の部屋の状態が分かる写真や動画を残し、返金の条件をしっかりと確認しておきましょう。また契約期間を延長する場合には家賃が上がることがほとんどで、物価が高騰しているアメリカでは長期の契約になるほど家賃が高くなるという現象が起こっています。ただし、カリフォルニア州では家賃の値上げは5%プラスCost of Living の上昇率で、上限は10%に制限されています。

・テナントの義務

通常テナントには室内や庭を綺麗に保つ義務が課せられており、それ以外にも外装や内装に手を加えること、契約者以外の入居、ペットの飼育などが禁止されていたり、住居として借りている場合にはビジネスの拠点にしないことが契約上の条件となっていたりします。契約で禁じられている条件に違反し、3日以内に改善できない場合は即時退居するよう通知を受ける可能性があります。またペットの飼育が認められていても、多くの場合ペットの数に応じて家賃が上がります。

・保険

賃貸契約をする際にテナントはRenters Insuranceに加入することが一般的です。水漏れや災害の際に損傷した家具調度品、電化製品、服、装飾品、宝石やホテル代などを補償するだけでなく、家の内外で盗まれたり壊れたりしたものの補償、被保険者が誤って誰かに怪我をさせたり物損を与えたりした場合の補償が受けられます。ペットが来訪者に怪我をさせた場合も、保険を使って相手の治療費を支払うことができます。

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