在米日本人にとってのパーソナル・ファイナンスとは

みなさん、はじめまして。このコラム・シリーズでは、日米の年金制度、税制、資産運用など、アメリカに住んでいる日本人に必要な、パーソナル・ファイナンスにまつわる様々なトピックを扱う予定です。

アメリカに住んでいる方には、数年程度の駐在員、永住権・市民権を取得して長期滞在またはアメリカを終の棲家と決めている、引退後には日本帰国を計画しているなどいろいろなライフ・プランの方がいらっしゃると思います。また、ライフ・ステージ的にも30・40代の資産形成期の方から、50・60代のリタイアに向けた本格準備の世代、70代以降のシニア世代と様々です。このコラムでは、そんな幅広い在米日本人向けに、お金にまつわる役立つ情報を提供したいと思っています。

例えば、次のようなトピックを考えています。こんなことが知りたいといったご要望がございましたら、ぜひお知らせください。

· ソーシャル・セキュリティの仕組み
· リタイアメント・プランニング
· 資産運用・資産形成の考え方
· 税制の仕組み、注意ポイント
· 401(k)やIRAの有効活用
· 投資信託、ETFの選び方
· 大学進学にかかる費用や準備方法
· 医療や介護にかかる費用や保険の仕組み
· 駐在員のための資産形成方法、注意点
· 投資対象としての暗号資産(ビットコインなどの仮想通貨)

さて、本コラム・タイトルでもある「在米日本人のパーソナル・ファイナンス」について整理してみたいと思います。

パーソナル・ファイナンスは、人生の様々なライフ・ステージにおけるお金の問題への対応やプランニングのことです。在米日本人はアメリカに住んでいることによって、日米の年金、税制、金融という二つの制度に向き合いつつ、家計管理、資産形成を行っていく必要があります。結果として在米日本人のパーソナル・ファイナンスは、日本にいる場合より格段に複雑です。

しかし、パーソナル・ファイナンスに関する日本語での情報やアドバイスは、圧倒的に不足しています。また、専門家は資産運用、税務・会計、年金・保険といった分野別に存在し、パーソナル・ファイナンス全般をカバーできる専門家、アドバイザーは稀です。アメリカ人のファイナンシャル・アドバイザーは日本のことは分かりません。

そんな難しさに直面しがちな在米日本人ですが、アメリカに住んでいることによって、良いこともあります。それはなんと言っても、資産運用を行う環境が恵まれているということです。例えば、足元の金利水準は、アメリカは日本より4%程度高いです。金融危機後のアメリカ株の上昇はめざましく、日本株の10倍の市場規模があります。為替リスクを意識することなく、アメリカの広大な債券、株式市場にアクセスできるのは素晴らしいことです。運用サービスも競争的でイノベーションが起こりやすい市場で磨かれており、きちんと選べば、良質なファンドに低コストで投資することができます。資産運用に関しては、日本では望むべくもない、恵まれた状況です。

アメリカに住んでいる日本人には、二国にまたがる制度の複雑性、日本語での情報不足を乗り越えながら、世界随一の資産運用環境を賢く利用し、アメリカ生活をエンジョイすることに役立てていただきたいと思っています。それが、在米日本人にとってのパーソナル・ファイナンスと言えるでしょう。

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後藤浩 (Hiroshi Goto)

後藤浩 (Hiroshi Goto)

ライタープロフィール

Goto Financial Advisory LLC 代表
東京大学経済学部卒。早稲田大学大学院経営管理研究科修士(MBA)第一生命、PwC勤務後、年金基金向け運用コンサルタント、米系資産運用会社の執行役員など25年の資産運用業界経験を有する。2023年に在米日本人のためのフィナンシャル・プランニング法人、Goto Financial Advisory LLC設立。 リタイアメント・プランニングに役立つブログ多数掲載中。 2019年よりテネシー州在住。Sister City of Nashville 理事。資格:CFA協会認定証券アナリスト、米国税理士、認定ソーシャル・セキュリティ・アナリスト

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