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【ニューヨーク不動産最前線】お金のやり取り
- 2024年8月2日
不動産業界は、お金のやり取りに関しては非常に保守的な業界です。依然として小切手を使用するケースが多く、特にアパートを借りる際には管理会社が銀行振出小切手(Bank Certified Check)しか受け付けない場合が多くあります。入居審査申し込みにかかる費用がいくつかあり、クレジットカードや銀行振込が使える場合もありますが、入居や退出に関わるMove-in/out FeeとMove-in/out Depositについては、わざわざ銀行に行ってBank Certified Checkを作成する必要があります。これらの小切手が前もって管理会社に届けられていない場合、たとえ引越し業者がビルに到着していても荷物の搬入・搬出は許可されないため、最大の注意が必要です。
さらに、リース契約書にサインする条件として、テナントはまずオーナーへの前家賃と敷金、そしてブローカーへのコミッションの支払いをすることになります。これらの支払いもBank Certified Checkが求められます。ニューヨーク市(NYC)の場合、契約書にサインしただけではアパートへの入居が保証されるわけではなく、その後、コンドミニアムまたはコープのボードの審査にパスする必要があります。そのため、これらの支払いはすべてボードの承認が下りるまで、オーナーもしくはオーナーのエージェントが預かることになります。入居審査には時間がかかるため、ボードの承認が下りた時に小切手を入金しようとした際に残高不足などで跳ね返されないよう、確実に小切手の有効性を担保するために個人の小切手ではなくBank Certified Checkが必要なのです。
ただし、テナントが遠隔地や外国に住んでいる場合、物理的にBank Certified Checkを作成してタイムリーにオーナーに届けることが困難な場合もあります。単純に時間がなくて銀行に行けないという場合もあります。今日ニューヨークにいて、明日には別の地域に移動するという現在の生活様式において、昔ながらの小切手のやりとりでは対応しきれなくなってきています。
そこで、最近登場した新しいシステムがあります。ボストンでは以前から利用者が多かったようですが、NYCにはつい最近紹介されました。Deposit Linkという会社が一旦資金を預かり、支払いのタイミングが来たときに各所に資金を移動するという方法です。具体的には、テナントはDeposit Linkにアプリを使って入金し、ボードの承認が下りた時点でDeposit Linkからオーナーの口座へ支払いができるのです。送金のタイミングを含めてすべての操作はアプリかウェブのリンクから簡単に行うことができ、口座番号の開示も必要なく、入力に必要なのは取引物件の住所とeメールアドレスのみです。お金のトラッキングもすべて物件住所から確認することができます。送金のイメージとしてはZelleやVenmoでのお金のやり取りのような感じです。
Deposit Linkからの送金には1件につき15ドルかかりますが、銀行に行って銀行振出小切手を作成する時間と手間、さらにBank Certified Check作成費を考えると利用するメリットは大きいです。まだ一般的には浸透していませんが、賃貸のケースを中心に利用者がどんどん増えているようです。今のところ、Deposit Linkを利用できるのは米国内の銀行に限られていますが、そのうちグローバルに使えるようになる日が来るかもしれません。
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