ゼロ・ウェイストな暮らし
- 2024年9月30日
- 2024年10月号掲載
世界各国でサステナブルな取り組みが行われている今、個人でもできる取り組みの一つがゼロ・ウェイスト。本特集ではゼロ・ウェイストについて学びながら、家庭でも楽しく取り入れられるさまざまな方法を紹介する。
世界のゼロ・ウェイスト
私たち人類が一つしかないこの地球で安定して暮らし続けていくために、2030年までに達成すべき目標として掲げられたSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)。世界中でこの取り組みが始まってからというもの、世の中のあらゆる場所で「サステナブル」なモノ、コト、考え方が浸透している。そしてSDGsの一つとして設定されているのが、ゴミ削減に関する目標だ。「つくる責任、つかう責任」と題し、リサイクルやリユースをすることでゴミが発生する量を大きく減らすことを目的としており、実現のために従来の使い捨て社会から循環型社会へと切り替えていく取り組みが広がっている。「ゼロ・ウェイスト(Zero Waste)」はそんな取り組みの一環で、無駄や浪費を無くすことで生活や事業によるゴミの排出をゼロにすることを目指すもの。国際的に定められた定義によると、ゼロ・ウェイストは「環境や人間の健康を脅かすことなく、資源を燃焼させず、また陸地、水中、空気中に排出することなく、責任ある生産、消費、再利用、回収によってすべての資源を保全すること」と説明されている。
ゼロ・ウェイストが注目を集めるきっかけとなったのは、プラスチックのゴミが世界中で問題視され始めたことによる。特にプラスチックゴミによる海の汚染は深刻視されており、このままいくと2050年までには海に打ち捨てられたプラスチックゴミの重量が海に生息する魚の総重量を超えるとの予測も出ている。海に流れ込んだプラスチックは、ほとんどの場合が分解されることはない。それによって何が起こるかというと、直接的に影響があるとされているのはやはり海洋生物だ。ポリ袋はグラゲや海藻に似ているため、クジラやウミガメが誤食してしまうことが多くある。プラスチックは消化できないためそのまま胃に溜まってしまい、常に満腹感を得た状態を生物に与える。その結果、食欲が低下して栄養不足となり、脱水と飢えにより衰弱死してしまうケースが見られている。以前、フィリピンの海岸に打ち上げられたクジラの死骸の胃の中から40キログラムものポリ袋が見つかった。まだ若いオスのアカボウクジラで、痩せ衰えて脱水症を起こし、死ぬ前に吐血した形跡もあったという。
このような海洋生物への影響は生物多様性の低下をもたらすだけでなく、環境保全機能の損失、漁獲量の低下、さらにはプラスチックの成分を取り込んだ海洋類を食べることによる人体への影響など、私たちの生活にも悪影響を及ぼす。現在、水路や海へのゴミ廃棄行為を改善するために、各国の政府がさまざまな対策を立てている。
では、ゼロ・ウェイストを目指すために世界ではどのような取り組みが実施されているのだろうか?
たとえばカリフォルニア州サンフランシスコでは、ゴミをすべてゴミ処理工場で燃やして処理するのではなく、プラスチックやガラスなどはリサイクル、生ゴミや紙製品などはコンポスト、それ以外は埋め立てという3つの再利用に充てることでゴミの総量を減らしている。
また、スウェーデンのストックホルムでは、生ゴミと下水汚泥から出たバイオガスを市バスや家庭の燃料として再利用している。さらにドイツでは飲み物のビンやペットボトルといった容器にデポジット制度を導入し、使用済み容器を返却するとデポジット分の金額が返却される仕組みをつくることで使用済み容器の回収を進めている。
このように、世界各国で環境保全のためのさまざまなゼロ・ウェイストの取り組みが実施されているのだ。
世界中が動き出している今、私たち個人も他人事ではなく自分事として捉え、意識を変えていかなければならない。自分にできることは何か、身近なことから考えて行動を起こすことで、地球の環境改善の大きな一歩に貢献しよう。
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