アメリカでの成功をもとに水産業改革を目指す

TOP INTERVIEW アメリカ市場に勝負を賭ける日本人経営者に聞く。

Fisherman's Table Yamazaki
山崎 一馬/ Kazuma Yamazaki

アメリカで挑戦を続ける漁業改革者。漁業ビジネスとレストラン展開で成功を収めた山崎一馬さんに、アメリカでの漁業ビジネスの挑戦と未来のビジョンについて話を聞いた。

自分のルーツと背負う責任感

淡路島の漁師の家に生まれ、幼い頃から漁業界の問題を目の当たりにしてきました。「この業界を良くしなければならない」という強い思いが根底にありました。漁業は競争が激しく、他の漁師よりも多くの魚を捕ることが利益に直結し、この「大量貧乏」の状況が漁師たちの協力を妨げています。しかし、日本は豊かな海洋資源を持つ海洋国家です。協力し、持続可能なシステムを構築することで漁業を成長させられるはずです。次の世代が漁業を続けられる環境を作るために、僕は漁業界の改革に人生を賭ける決意をしました。

直面した現実と日本制度の限界

かつて日本で政治家として活動していましたが、若さゆえの誤解や力不足を痛感しました。声を上げるだけでは実現が難しく、みずからの力を高める必要を感じたのです。漁業の法人化を提案するも認められず、地元での事業拡大にも限界を感じていた矢先、東日本大震災が発生。震災後、国が設けた宮城県の「漁業特区」は地域再生を図るものでしたが、新規参入者には多くのルールが課され、実質的な壁が存在していました。これにより、日本の特区制度の限界と課題を痛感したのです。

アメリカでの挑戦

漁業先進国であるアメリカでの可能性を模索するなか、卸業者からの人材需要を知り、ビザを取得して漁業ビジネスに携わろうとしました。しかし、パンデミックの影響で計画は頓挫。そこで、みずから魚を販売する会社を立ち上げ、日本から仕入れた魚を現地でさばき、刺身として提供するビジネスを始めました。レストラン営業が難しい時期にも一定の需要がありましたが、生活の安定には至らず、さらなるビザの変更も必要となりました。

レストランビジネスの展開と成功

その後、資金を調達し、アメリカで寿司レストランを開業しました。オープン直後は「コロナバブル」に助けられて順調に経営していましたが、パンデミック収束後、インフレや金利上昇の影響で一時は苦しい状況に。それを打破するために始めた月1回の「まぐろ解体ショー」が大変好評で、予約が取れないほどの人気店へと成長。今ではまぐろを中心としたビジネスが軌道に乗り、さらなる影響力の拡大を目指しています。

今後の展望と水産業改革への決意

私の漁業に対する考え方は常に変化しています。アメリカでのレストラン運営を通じ、漁業の可能性に気づくと同時に、ただ魚を捕るだけではなく、価値を生み出す必要性を実感しました。日本の漁業も、より新しい価値を提供する仕組みへ変わるべきだと考えています。私の最終目標は、日本の水産業を製造業のように改革することです。そのために実績を重ね、みずからの影響力を高めていきます。漁師の魂を胸に、持続可能な未来を築くため、これからも挑戦を続けていきます。

プロフィール
山崎 一馬
淡路島で漁業の家系に生まれ育つ。経済的自立を果たした漁業起業家であり、若き政治家としての経験を持つ。現在、カリフォルニア州オレンジカウンティで寿司レストラン「Fisherman’s Table Yamasaki」を経営。次の世代の漁師たちのために、持続可能な方法で海の恵みを最大限に活かす活動に邁進している。
HP:https://fishermanstable-yamasaki.com

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