【ニューヨーク不動産最前線】知らずに買うと後悔?NY不動産を左右する最新条例

建物と街の安全性を維持するために、ニューヨーク市では様々な条例(Local Law)が制定されています。市内は建物が古くて密集しているため、規則は年々厳しくなり、新たな法律も次々と追加されています。建物の安全性に関する法律は多いので、その中でも主なものを以下にご紹介します。物件を購入する際は部屋の見た目や価格だけでなく、これらの法律を遵守しているかどうかが重要なポイントとなります。検査が適切に行なわれていなかったり、問題をそのままにしていたりするビルに対してはペナルティが課されます。知らずに購入して、後で後悔することがないようにしたいですね。

Local Law 11(LL11=外壁検査):
6階建以上の建物は、定期的に外壁検査を実施する義務があります。5年に一度足場を組み、ビル全体の外壁を検査・修理します。ニューヨークでは街中で足場を見かけることが多いですが、これは新築工事ではなく、LL11による外壁検査が行われているためです。検査とはいえ、作業は通常何カ月も続くことがあり、場合によっては2年近くかかることもあります。一見すると大規模な工事のように見えるほどで、ビルにとって金銭的負担も大きくなります。

Local Law 157(LL157=ガス探知機の設置):
今年5月から、建物内のすべての部屋に既存の煙探知機と一酸化炭素検知器に加えて、ガス探知機の設置が義務付けられます。

Local Law 126(LL126=駐車場検査):
2022年以降に施行され、6年ごとに検査を行う義務があります。建物内や地下に駐車場がある場合、これらの検査を怠ったり構造上の問題を放置したままにしていたりすると、アパート自体には問題がなく、さらに駐車場が購入対象に含まれていなくても、建物内に駐車場があるだけでバイヤーの融資審査に影響が出る可能性があります。

これらの法律への対応には多額の維持管理コストが伴うため、管理費の上昇を招き、最終的には不動産価値にも影響を及ぼす可能性があります。実際、ニューヨークでは古い建物が多く、これらに対応するために管理費が次々と引き上げられ、スペシャルアセスメント」という一時的な追加負担金がオーナーに課されるケースも増えています。維持費の高騰により物件の取得ハードルもますます高くなっています。

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柏原知子 (Tomoko Kashihara)

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

ライタープロフィール

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2021年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

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