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海外教育Navi 第86回
〜海外から海外への横移動にともなう子育ての留意点〜〈後編〉
記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)
- 2021年10月15日
海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。
Q.海外から、環境の異なる海外に横移動します。子育てにおける留意点を教えてください。
前回のコラムでは、横移動のTPOや子どもへの接し方についてご紹介しました(前回記事へ)。今回は、子どものサポートの仕方についてご説明します。
小さな子どもの場合
小学校低学年であっても転校は子どもにとって相当なストレスであり、「安易に考えてはいけない」ということを押さえておく必要があります。異種の学習言語間の転校だけではなく、同じ言語間のインターナショナルスクール・現地校間、日本人学校間の転校でもいえることです。年齢が低いから大丈夫だろうという過信は禁物であり、未就学児であっても同様です。
子どもをサポートする
どのような手立てで子どもをサポートするか、いくつかの例を紹介します。なお、横移動でも、初めての海外赴任でも、この項目はすべて共通といえます。
・子どもの様子を両親それぞれの目でしっかり見てあげる。
・子どもを応援する、励ましてあげる、ささいなことでも褒めてあげる。
・スポーツなどことばを使わなくてもできるコミュニケーションを有効に活用する。
・学校行事には両親とも積極的に参加する。先生との面談も母親もしくは父親だけに任せず、両親で対応する。
・学校の様子をいままで以上に聞くように心がける。
・自分たちができないのなら家庭教師を手配するなど、困りそうな、あるいは困っていることを助けてあげる。
・子どもは子どもなりに一生懸命がんばって無理をしがち。あらかじめ子どもの限界点をきちんとつかんでおく。
・「転校する」「日本に帰す」などの状況の想定・策も考えておく。
「O(場合・状況)」が変わったために家庭方針の変更や苦労をした例
EさんFさんご一家とも家庭方針は「海外では、家族はできるだけいっしょに過ごす」でしたが……。
<E家の場合>
今後の赴任のことを考えて、南アジアの日本人学校の中学部1年生だった長男のインターナショナルスクールへの編入を考えはじめていたところ、南米への転勤となった。そこでは高校段階における現地校やインターナショナルスクールへの通学が難しいことから、日本人学校へ編入した。卒業後、長男は単身帰国し、国内の寮のある高校へ進学した。
<F家の場合>
中南米間の移動で、日本人学校から日本人学校へ転校した。前の日本人学校は通学時間が短く、治安上の問題もなかったが、移動先の日本人学校への通学には1時間以上もかかり、通学バスの窓のカーテンもしっかりと閉めていなければならない状況だった。長女は車酔いがひどく登校できない日もあり、家族のみの先行帰国を考えた。幸い、長女の成長もあり、車酔いを多少克服できたため通学を再開できたが、辛い日々だった。
帰国のイメージを持つ
横移動に関して考えてきましたが、長い海外生活からの急な帰国で、国内の学校で不適応を起こしてしまった子どもも残念ながらいます。気持ちの準備ができていなかったために、生活の変化についていけなかったようです。
大切なのは、日ごろから帰国を含めて急な発令への準備を怠らないことです。社会情勢等の変化で急に帰国をしなければならない状況もあることを子どもにも自覚させ、家族で想定、共有しておくとよいでしょう。
帰国の予定が先であっても、大学進学ぐらいまでのスパンで進路などのイメージをお子さん一人ひとりに対してつねにお持ちください。
まとめ—ある経験者の感想から—
横移動は結果的に駐在期間が長くなることにつながります。それに伴う子どもの苦労にどのように寄り添うのか、日本人としてのアイデンティティや素養をいかに育んでいくのかという課題に直面することになるでしょう。
親としてのリードやバックアップをできるかぎり行うことは必要です。ただし、それと同時に「子どもの力をどこまで信じてあげられるか」、親の胆力が試されるということも忘れてはいけないと思います。
海外子女教育振興財団 教育相談員
後藤 彰夫
千葉県と東京都で教員、ワルシャワ日本人学校教諭を経て、東京都の公立学校で教頭・副校長・校長を歴任。2013年から6年ほど本田技研工業株式会社で教育相談室長を務め、2019年より海外子女教育振興財団の教育相談員。東京都海外子女教育研究会、全国海外子女教育・国際理解教育研究協議会事務局長も務める。
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