自動車メーカーが環境戦略を推進する中、部品メーカーも対応を迫られている。ただ、そのコストは自身で負担する以外に選択肢がほとんどなく、すでにインフレやエネルギー価格高騰に苦しむ多くのサプライヤーにとっては非常に厳しい状況だ。
■メーカーの支援は期待薄
ロイター通信によると、大手自動車メーカーは電気自動車(EV)への移行を加速化し、規制当局や投資家を満足させるためサプライチェーン全体をより環境に優しい形にしようとしている。独BMWの場合、全ての電池メーカーと多くの鉄鋼・アルミニウムメーカーに再生可能エネルギーを使った生産を望み、スウェーデンのボルボは2025年までに部品の25%を再生可能プラスチックにする目標を掲げている。
このため多くのサプライヤーは業務のグリーン化のために多額を投資しているが、それを理由にした部品の値上げに応じるメーカーはほとんどないと考えられる。メーカー自身も低炭素化時代への対応に何百億ドルもの資金を投じ、コスト重視の姿勢を一層強めているためだ。調査会社オートフォーキャスト・ソリューションズのジョー・マケイブCEOは「サプライヤーは、EV生産を支える新技術の開発や環境対応型サプライチェーンの構築に高額の投資を求められているが、メーカーからの見積依頼書(RFQ)の額と差がありすぎて実現可能とは思えない。それでも自動車メーカーは、この新しい環境革命の一翼を担いたければ同業に仕事を奪われないよう限りなく好ましい価格を提示してくれという態度だ」と指摘。今後5~10年で自動車業界のサプライチェーンは激変すると見ている。
■小さなサプライヤーは窮地に
スイスのコネクター会社TEコネクティビティー(時価総額約390億ドル)は20年から、持続可能性を目指した独自の活動を開始し、フォルクスワーゲン(VW)、ボルボ、BMWなどと共同で再生可能な製品づくりに取り組んでいる。ラルフ・クレトケ最高技術責任者(CTO)は「環境への配慮は大手サプライヤーでも負担が大きいが、小規模なサプライヤーにはより深刻な問題で、持続可能性に対応できなければ調達プロセスから排除される」と話す。
スイス/イタリア系プラスチック・ゴム部品供給会社シジット(Sigit、年間売上高約2億ドル)は、19~20年に1000万ユーロを投じてトリノに研究センターを設立。3年かけて従来の金属部品より90%軽い再生可能な熱可塑性複合ブラケットを開発し、初めてステランティスとの契約を獲得したが、エマヌエル・ブスカリオーネCEOは「私たちはわずかな経営資源を技術革新に投じているが、顧客の自動車メーカーは、高級ブランドであっても環境に配慮した新製品にこれ以上金を払いたがらず、追加コストを顧客に転嫁することは大変」という。
ブレーキディスクなどの鋳鉄部品を作っているドイツのM・ブッシュ(M.Busch)も、有機廃棄物を原料とする「バイオコークス」への転換、再生可能エネルギーの使用、金属溶解用ガスの水素への置き換えを望んでいるが、有機廃棄物の入手は困難、水素供給インフラも不足している上、再生可能エネルギーは従来の電力に比べてまだ割高だ。それでも自動車メーカーはグリーンエネルギーを使う業者としか取り引きしたがらないため、同社は窮地に立たされている。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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