揺らぐタブレットの存在意義 〜 低価格機種の台頭で巻き返しに期待も

 スマートフォンの画面大型化やラップトップの薄型化にともなって、タブレットの販売が減速しており、タブレット市場の存在意義が揺らいでいる。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、最初のタブレット製品であるアイパッド( iPad)をアップルが2010年に発売した時、当時のスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)は、「すでに多くの人がスマートフォンやラップトップを持っているのに、この新部門は必要か?」と考えた。

 しかし、アップル経営陣は最終的に「イエス」の判断を下し、タブレットは業界史上もっとも急速に普及した消費者電子製品の一つになった。

 ところが現在、アイパッドの販売台数は2四半期連続で減少し、売り上げも過去5四半期のうち4四半期で落ち込み、他社の対抗商品の販売増も減速している。

 多くの消費者にとってタブレットは、スマートフォンほど必需品でもなければ持ち運びも便利でもない。また、ラップトップやデスクトップほどの機能を持つわけでもない。

 ハイテク分野ブログのストラテチェリー(Stratechery)の専門家はタブレットについて、「必要ではないが欲しい物」にすぎないと指摘する。さらに、タブレットが欲しいと思っている人の多くはすでに持っており、買い替え時期が来ると、新型のスマートフォンやラップトップの購入を検討することが多い、と同氏は話す。

 アップルの2014年第2四半期(4〜6月)の販売を見ても、アイフォーン(iPhone)の13%増、パソコン「マック(Mac)」の18%増に対し、アイパッドは9%減となっている。

 タブレットの減速徴候は以前から確認されていた。市場調査IDCは5月に、タブレットの世界出荷見通しを下方修正し、2014年の伸びは12%で前年の52%から大幅に減速すると予想した。

 業界2位のサムスンも関連販売予想を下方修正。マイクロソフトはサーフェスの小型版の発売計画を見合わせている。

 メーカーの懸念の一つは、デジタル音楽プレイヤーのアイポッド(iPod)の人気がアイフォーン登場によって落ちたように、アイパッドも別の部門に飲み込まれてしまうのではないかという点にある。

 しかし、中国を中心とする小さなメーカーが100ドル以下のタブレットを販売し、有名ブランドから市場を奪っている地域も世界にはあり、懸念は杞憂に終わるという意見も多い。

 アイパッドは、最も安い機種で299ドル、9.7インチの最新版は499ドルするが、アンドロイド系タブレットの平均価格は228ドルだ。

 通信サービス業者(キャリヤー)も安いアンドロイド機種を積極的に扱って販売している。ベライゾンでは「エリプシス7」を無償提供して、第2四半期にタブレットのサービス契約を110万件増やした。

 IBSの通信業界専門家は、「キャリヤーが無料または格安でタブレットを提供すれば、500ドルも出してアイパッドを買おうという人は減る」と指摘する。

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