HP、中国の通信網機器事業売却を模索 〜 米中関係の緊張で事業拡大に苦戦

 ヒューレット・パッカード(HP=Hewlett-Packard)は、同社の中国法人向け通信網機器事業であるH3Cテクノロジーズ(H3C Technologies)の売却を中国の未公開株式投資会社に打診した。関係筋が明らかにした。

 ここ数年は米国と中国のあいだで政治的緊張が高まっており、両国IT企業の相手国での事業にも影を落としている。HPによる通信網機器事業の売却も、米IT企業による中国での事業展開の難しさを示す例と言える。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、HPによるH3C売却は株式の51%程度にとどまり、売却後もHPが相当数の株式を保有する可能性がある。

 H3Cを完全に売却する場合、売却額は約50億ドルに達する可能性がある、と関係者の一人は話している。

 米中関係はここ数年、通信およびインターネット網ハッキング疑惑をめぐり緊張感が高まっている。

 米国政府は2012年に、中国政府がファーウェイ・テクノロジーズ(Huawei Technologies)の通信機器を利用し、米国人に対する諜報活動を行っていたと糾弾する報告書を発行。そのなかで米通信サービス事業者(キャリヤー)に対し、ファーウェイ製通信機器を使わないよう呼びかけた。

 一方、中国では、中国政府機関や金融サービス業界のあいだで中国系企業の製品やサービスを優先する傾向が高まっていることを受け、HPやIBMを含む米国の技術基幹設備大手が苦戦している。

 法人向け通信網関連機器についてもそれは同様で、各社は低価格製品の台頭に悪影響を受けている。

 IBMは10月初めに、x86サーバー事業を中国レノボ・グループ(Lenovo Group)に21億ドルで売却したばかり。

 HPによるH3C売却について、中国政府の承認を得るためには、売却先は中国地元企業である必要がありそうだ、と関係者は指摘する。

 ルーターやソフトウェア、交換機を扱うH3Cは中国における法人向けデータ通信網機器大手で、HPは2010年にスリーコム(3Com)を27億ドルで買収し、同事業を獲得した。

 H3Cは、ファーウェイとスリーコムの合弁事業として2003年11月に設立された。その後2006年に両社が合併を解消し、スリーコムがH3Cを完全子会社化していた。

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