軽量鉄鋼でアルミに対抗〜ミタルが自動車業界対策

 フォードを皮切りに自動車業界でアルミの多用が始まったことを受け、鉄鋼世界最大手アルセロール・ミタル(本社ルクセンブルク)は、自動車メーカーの「鉄離れ」を防ぐために2つの戦略を練っている。

 ブルームバーグ通信によると、同社の戦略は、新しい熱間プレス工法やレーザー溶接ブランクなどの技術を使って従来と同じ強度を保ちながらも軽い鉄鋼を提供することと、世界の自動車メーカーに向けて35人のエンジニアを派遣すること。

 フォードが最も人気の高いピックアップ・トラック「F150」の車体にアルミを使い始めた最大の理由は、鉄鋼より軽くて燃費を改善できるためだ。アルミは鉄鋼より溶接しにくく、コストも約3割高いという難点があったが、溶接に関しては技術革新で対応できるようになった。

 ミタルにとってフォードの決断は寝耳に水で、今は他の自動車大手が追随することを最も心配している。同社の軽量鉄鋼は、高価だがその分鉄を少なくでき、アルミとほぼ同じコストで約20%の軽量化が可能。しかもすでにピックアップ・トラック向けに提供されている。

 自動車メーカーにエンジニアを派遣するのは、車のデザイン変更作業に初期段階から関わり、鉄鋼でも同じコストで問題を解決できることを知ってもらうためだ。ミタルで自動車業界を担当するブライアン・アランハ氏によると、メーカーは無意識に鉄鋼から離れようとしている訳ではなく、鉄鋼で軽量化する方法を思い付かないからアルミに切り替えているだけで「それができることを知ってもらうのが自分たちの仕事だ」と強調する。

 現在、自動車業界の鉄鋼使用量は年間約1億5000万トン、アルミは450万トンとなっている。しかしアルミ業界では、関係者の多くが「今後の流れはアルミに分がある」と見ている。アウディ、BMW、ダイムラーなどに商品を供給しているノルウェーのアルミ大手ノルスク・ハイドロは、自動車向け需要の高まりを受けて、来年から1億3000万ユーロを投じてドイツ工場の生産能力を4倍の年間20万トンに拡大する計画だ。

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