紛争や災害が材料や部品の国際供給網に与えるリスクを管理する企業向けサービスが需要を強めている。
企業が契約する供給業者の金融問題や戦争、悪天候、大規模事故、自然災害の脅威に対する備えを支援するのがリスク管理サービスだ。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、供給網インテリジェント・サービスを2015年に始めた会計監査サービス大手KPMGは最近、その対象リスクに「地震や社会不安」を加えた。
同サービスを担当するKPMGスペクトラムは、第三者インテリジェンスというソフトウェアを使い、ニュース・サイトや情報サイトからそういった情報またはデータを入手し、供給業者の所在地や財務状況と照合してリスクを評価し、問題発生の恐れがあると判断される場合に、顧客企業に通知する。
具体的には、港湾労働組合のストライキや自然災害、社会経済的な緊張の高まりといった要因による供給業者の流動性が低下すれば警告が発せられる。
同部門の幹部ホルヘ・ブランコ氏は、「企業はもはや問題が起きてから反応するのではなく、問題を事前に予想する必要がある」と話す。
「一般的に、問題が発生する理由は一つではなく、関連のない3〜4件の理由が重なることが多い」と同氏は指摘する。
そういったサービスは、2011年の東日本大震災と津波によって多くの国際企業の生産に支障が起きたことをきっかけに始まった。
調査会社ガートナーのノーハ・トハミー副社長は、「供給網がより細分化、国際化するなか、企業は多くの小さな供給業者と取り引きするようになり、物流の追跡が難しくなっている」「リスクを見極めるためにビッグ・データや外部の情報を使い、当社が把握している供給業者の財務情報や天候、政情の動きと合わせて対策を考えたい」と話した。
一方、供給網管理ソフトウェアを開発するエレメンタム(Elementum)のロブ・チェン氏によると、ほとんどの損失は、より日常的な要因から発生するため、戦争や災害を想定したリスク管理方法には限界がある。
同氏は、「東日本大震災のような大きな出来事より、日々発生する問題の方がコストに影響する」「多額のコストは供給の流れが減速することで生まれるため、企業は供給網の一部が停止してもすぐに対応できるよう総合的に対処すべき」と警告している。(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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