物価の上昇や賃金の伸び悩みなどを受け、普通の米国人の所得では新車を購入できなくなっているという調査結果を、金融情報サービスのバンクレート・コムが発表した。
環境技術情報のGas2によると、バンクレート調査では、国内の大都市圏25カ所のうち、住民が安心して新車を買えるのは年間所得の中間値が10万ドルを超えるワシントンDCだけで、6都市圏では新車の平均価格が半分に下がっても人々が支払いに苦労することが分かった。ただし、DCには裕福な連邦議員や時給1000ドルのロビイストなど極端な富裕層が多いため、数字は必ずしも実情を反映していない。
自動車情報大手ケリー・ブルー・ブック(KBB)によると、2017年5月の平均新車価格は3万3000ドル。バンクレート調査では、新車を購入できるかどうかの判断に「頭金を20%払い、48カ月(4年)ローンを組んで月々の自動車保険やローンの支払いが世帯収入の10%以下に収まる」といういわゆる「20/4/10」ルールを適用した。
バンクレートのアナリスト、クラス・ベル氏は「普通の世帯は余裕を持って新車を買えない。これは多くの世帯が車代で無理をしていることを意味し、老後の蓄えなどほかの優先課題が押しのけられている可能性がある」と指摘する。車両価格の上昇はそれほど急速ではないが、医療費や大学の学費などは大きく上昇しており、賃金がそれに追いついていないため家計が苦しくなっている。このためベル氏は「車を買う時はまず頭金を貯めて準備すべき。たまに新車を衝動買いする人がいるが、十分な頭金がないと支払いを予算内に収めることは難しい」と警告する。
現在、自動車ローンの債務残高は総額1兆2000億ドルで、消費者債務の約10%を占めている。支払いの遅れは増えており、ニューヨーク地区連銀のデータによると延滞率は3月時点で約4%となっている。生活費が上がり続ける一方、米国の労働者はビジネスの国際化で外国の低賃金労働者との競合を強いられており、この40年間は実質賃金がじわじわと低下している。
自動車メーカーは低金利や長期ローンの提供で販売を補助しており、一部の高級モデルには96カ月以上の長期ローンもある。しかしそれほど長く車を所有する人は少なく、買い替え時に車の残存価値よりもローン残高の方が多いという、メーカーにとっても消費者にとっても良くない状況が生じる可能性がある。(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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