アマゾンのホールフーズ買収、食品業界を刺激

 オンライン小売り大手アマゾンが自然食品スーパー大手ホールフーズ・マーケットを買収して以来、食品業界全体で生鮮食品の売り方が変り始めている。
 
 ■客足は3%増加
 
 アマゾンは2017年6月に135億ドルでホールフーズの買収を発表。同8月に手続きを完了し、その後有料の特典制度プライム会員向けに新しい特典や食品の配達を提供している。
 
 ウォールストリート・ジャーナルによると、アマゾンは買収後、豊富なデータを活用して客が買うホールフーズ商品を追跡し、気に入りそうな物を各個人に売り込んでいる。企業や投資家、アナリストは、業界には今後さらに多くの変化が あると予想している。
 
 買収されたホールフーズの販売や配達量は伸びており、他の食品小売店やサプライヤーは基本的な販売戦略を見直し始めている。買収前のホールフーズは2年連続で販売が停滞していたが、携帯電話の位置情報を利用したデータ分析サービ スのタソス・グループ(Thasos Group)によると、買収後は客足が四半期ごとに前年同期比約3%伸びている。同社が11のスーパマーケット・チェーンを分析した結果、トレーダー・ジョーズとスプラウツでは常連客の8%がホールフーズを訪れるようになった。アマゾンに買収されたことで商品の値段が下がったかどうか調べている可能性があるという。
 
 ■オンライン投資の拡大

多くの食料雑貨店は、オンラインの配達受付やピックアップ・サービスに対する投資を加速しており、5〜6年中にと考えていた計画を2〜3年中に早めるところもある。
 
 食料品の即日配達をオンラインで受け付けるインスタカートでは、契約する小売店の数がホールフーズ買収前の30社から200社超へと増えた。クローガー、ウォルマート、ターゲット・ストアズはeコマース事業の買収活動を強化し、テクノロジー投資も増やすと予想されている。これらのチェーンは、最新技術導入のための資金を確保するため店舗の拡張を抑えている。
 
 ただ、ホールフーズの店舗数はクローガーの5分の1にも満たず、約8000億ドルに上る米食品小売市場のシェアも小さい。従来型スーパー大手の幹部らは「われわれの相手は消費者の主流で、平均世帯収入が年7万ドルを超えるホールフーズの顧客とはほとんど重複しないため、この1年で売り上げの大きな落ち込みはない」と話す。
 
 しかし、アマゾンがプライム会員へのホールフーズ商品値下げ期間を延長し、好みに関するデータをより多く収集し始めたことを受け、アナリストらは「同業各社は自社の顧客特典を見直す必要があるかもしれない」と見ている。
 
 ■通販でリピート客を獲得
 
 アマゾンは現在、一部地域のプライム会員に対して、数百品目を対象に10%の値引きと2時間以内の無料配達を提供している。多くの食品メーカーは、アマゾンやホールフーズでよく売れるようにパッケージや成分配合を調整するなど、衝 動買いではなくオンラインでの継続購入を狙うようになっている。
 
 ホールフーズに客を呼ぶためのアマゾンの作戦は単純で、国内460店舗でアボカドやバナナなどの値段を下げた。これで食料品の流通大手ユナイテッド・ナチュラル・フーズでは18年2〜4月期の純売上高が前年同期比で12%増加し、ホール フーズ向けだけで24%も増加した。ホールフーズの平均価格はまだ大半の同業よりは高いものの下がっており、特に定番商品の競争力強化に力を入れている。
 
 小売店は、アマゾンが次にどう出てくるか注目している。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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