石油会社がエンジン技術開発〜EVに対抗、燃費向上に励む

将来の自動車燃料をめぐって、石油業界と電力業界の生き残りをかけた闘いが始まっている。
 
■技術改善でシェアを維持
 
 ウォールストリート・ジャーナルによると、電気自動車(EV)の普及率はまだ低く、普及はゆっくり進むと予想されているが、この大きな変化が石油会社と電力会社の競合を生み出している。石油会社にとってガソリンやディーゼル燃料は 最も価値の高い商品であり、電力会社にとってEVは近年先進国の多くで伸び悩んでいた電力需要を復活させる急進的な方法を意味する。
 
 国際エネルギー機関(IEA)によると、2017年に登録された新車のうちEVは1.3%に過ぎなかったものの、台数は着実に増えており、バッテリー式EVは17年に310万台と07年の2700台から大幅に増加。国立再生可能エネルギー研究所 (NREL)の調査では、EVによって電力需要は向こう30年で2〜3倍に高まる可能性がある。
 
 こうした予想は石油業界に懸念をもたらしている。現在、石油の4分の1強はガソリンの生産に使われており、EVの普及で市場が縮小すれば、石油大手の精製能力や原油が余る可能性がある。しかし石油エコノミストは「エンジンの効率を改 善して化石燃料車の利点を強調できれば、シェアの低下を遅らせることができる」と見ている。
 
 世界最大の石油会社であるサウジアラビア国営サウジ・アラムコは、石油市場を維持するため、ミシガン州の同社「デトロイト調査センター」に技術者30人を配置し、高効率エンジンの開発に取り組ませている。開発した画期的な技術は広 く共有する予定だといい、デイビッド・クリアリー所長は「技術を使った生産に移ろうとしている。とにかく速くしたい」と話している。
 
 同社の技術を使ってエンジンを改造すると、連邦環境保護局(EPA)の評価で21マイル/ガロン(mpg)と認定されたフォードのピックアップ・トラック「F-150」の総合燃費を37mpgに高められるという。また同社はボルボのトラックの排ガスから二酸化炭素(CO2)を分離、回収して再利用や保存のため経由地で回収容器を下ろす技術の開発も進めており、燃費も10%改善したいと考えている。
 
■政府はEV普及を支援
 
 米国の石油業界は長年、エタノール業界の侵略に対抗してきたが、全米の州議会で力を持つ電力業界はより手強い相手になる可能性がある。電力会社の中には、EVの普及を促進させ、大気浄化や温暖化ガス排出量の削減に貢献するのだと 政治家や政府機関を説得し、カーシェア・ネットワークを構築してそのコストを消費者に転嫁する認可を求めるところもある。
 
 カリフォルニア州議会は18年5月、充電施設網の構築に1億3690万ドルを投じるという電気・ガス大手サンディエゴ・ガス&エレクトリックの計画を認可し、6月には同業のサザン・カリフォルニアエジソンも7億6000万ドルの事業案を提出し た。同州は、トラック、バス、フォークリフトなど州内の港で使われる重機の電動化で5億7800万ドルを補助する案も認可している。
 
 ニューヨーク、ニュージャージー、メリーランド各州の電力会社も、EV充電網の構築に5億ドルを投じる予定だ。
 
 一方、石油会社の抵抗も激しくなっており、コロラドでは18年、電力会社にEV充電施設の設置を認める法案がガソリンスタンド・オーナーらの反対を受けて不承認となった。国外では、EVの増加に違った手法で対応する石油会社もある。英蘭系のロイヤル・ダッチ・シェルは充電会社を買収し、欧州の給油所に急速充電器を設置している。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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