このほど中西部を襲った記録的な寒波は、寒さに弱いと言われる電気自動車 (EV)のオーナー、そして2018年に販売台数と顧客を大きく増やしたテスラをあわてさせた。次に大寒波が来るまでに、EVオーナーとメーカーはいくらかの準備をしないといけないようだ。
■レンジ計は急下降
ブルームバーグ通信によると、寒波が居座った1月末からの数日間、テスラの量産型EVセダン「モデル3」の所有者らは、寒さで起きた車の問題をソーシャル・メディアやオンライン・フォーラムに相次いで投稿した。寒さは車のブランドに関係なくバッテリーの性能を低下させるが、それ以外にもテスラには特有の問題があった。
ニュージャージー州に住む公認会計士、ロナック・パテル氏は18年8月にモデル3を購入し、寒波の間も約150マイルを走った。「今一番の心配は、寒さで車のレンジ計(今のバッテリー容量で大体何マイル走れるかを表示する)が一晩で20~25マイル下がり、職場への運転中にも5~10マイル下がったことだ」と同氏は話す。「こんなバッテリーのために6万ドル払ったつもりじゃないんだけど」
ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)のアナリスト、サリム・モーシー氏は「テスラのバッテリーはパナソニック製だから、これはテスラ特有の問題ではない。シボレー『ボルト』や日産『リーフ』といったほかのEVでも起きる」と指摘した。
■ドアが開かない
テスラは18年、前年比3倍増の24万5000台超を販売した。大きく増えたのは下半期で、同社を率いるイーロン・マスク氏が「地獄」と呼んだ生産上の問題が解消されたためだが、BNEFのモーシー氏は「テスラに特有なのはデザイン上の問題だ」と話す。モデル3のドアハンドルは、車体と同一平面に収まっており、横長のハンドルの端を押し込むともう一方の端が出っ張り、それをつかむことで開くようになっている。ところが気温が下がってハンドル内部が凍るとこの機構が働かず、ドアを開けられない。寒波の間、その様子を映した動画が出回った。
単に不満を発散しただけの投稿者もいたが、テスラやマスク氏本人に修正を求めた人もいた。ボストン在住のソフトウェア・エンジニア、アンドレア・ファルコン氏は、凍ったハンドルの写真に「このふざけた車の横で一日中待つことはできない」のコメントを添えてツイッター投稿した。2か月前にモデル3を購入した時は、同氏は車の横でポーズをとっている写真と笑顔の絵文字を投稿していた。
中西部の寒波よりも前に、カナダのオーナーらはハンドルが凍りついたらどうするかをビデオで紹介していた。ユーチューブに投稿された約7分のビデオでは、オーナーがドアハンドルに歯科用接着フィルムを貼って凍結を防いでいた。
カナダ東部の別のモデル3オーナーは12月、ツイッターにビデオ投稿し、やや過激な意見を述べた。「ここはカナダだ。あらゆる物が凍る。#tesla#model3は車であってガラス細工ではない。ハンドルが凍ったら文句を言うより一発ガンとやれよ」
マスク氏は1月25日のツイッター投稿で、テスラが寒さへの耐久性を高めるソフトの無線アップデイトを準備中であることを明かしたが、それ以上の詳細は提供しなかった。 (U.S. Frontline News Inc.社提供)
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