アマゾン、小売店自動化技術を他社に販売へ ~「ジャスト・ウォーク・アウト」を9日に立ち上げ

アマゾンは9日、キャッシャーレス・コンビニエンス店舗向け技術をほかの小売会社に販売する新事業を発表する。ロイター通信によると、同社は、「数社」とすでに契約したとロイター通信の取材に対し明かしたが、その社名を公表しない方針だ。同事業は、物理的小売店業界に破壊的(現状を打破する)革新をもたらすと目されているが、市場競争や消費者データ所有権という課題もある。

▽専用ウェブサイトで対応を開始

アマゾン(Amazon)の新事業は、ジャスト・ウォーク・アウト・バイ・アマゾン(Just Walk Out by Amazon)と呼ばれ、9日に正式に立ち上げられるウェブサイトによって、キャッシャーレス・コンビニエンス店舗向け技術に関する問い合わせへの対応を開始する。

アマゾンは、キャッシャーレス・コンビニエンス店を可能にする技術をほかの小売会社に提供する方針を2019年に示していた。

同社が実在小売店業界で初めて実用化したキャッシャーレス・コンビニエンス店「アマゾン・ゴー」では、消費者がスマートフォンをかざすことで入店を確認し、店内のいたるところに設置されている機械視認カメラや検知器、人工知能によって、来店客が手に取った商品を認識し、客が商品を持って店外に出る際に、専用のモバイル・アプリケーションにあらかじめ登録されたクレジット・カードによって自動決済される。

▽アマゾン・ゴーとは少し異なるしくみ

アマゾンの物理的店舗&技術担当副社長ディリップ・クマール氏によると、ジャスト・ウォーク・アウト・バイ・アマゾンのもとに他社に販売される技術とアマゾン・ゴーで実用化された技術には違いがある。

ジャスト・ウォーク・アウトの場合、来店者が改札口(小売店の入り口)でスマートフォンをかざす代わりに、クレジット・カードを挿入することでだれが入店するかが確認される。その際に、「ジャスト・ウォーク・アウト・テクノロジー・バイ・アマゾン」のロゴが表示される。

それ以外の技術は基本的にアマゾン・ゴーとほぼ同じ。また、ジャスト・ウォーク・アウト・サービスを採用した小売会社が自社ブランドのもとに完全に管理および運用できるよう設計されている。

▽競争激化で需要の見通しは難しい

ジャスト・ウォーク・アウトの需要については、きわめて旺盛になるだろうという楽観的見方もあるが、そうともかぎらない。アマゾン・ゴーが登場して以来、店舗での自動決済技術および関連サービスを開発する新興競合社らが多数出現しためだ。ウォルマートに代表される大手らも、独自の決済自動化ソリューションをすでに試験運用している。

アマゾンは、自動決済技術を空港内売店や大型催事施設内売店を運営する会社に販売する方針だと数ヵ月前に報じられたが、クマール副社長はその点について明言を避けた。また、ウォルマートといった既存大手らに提供するという憶測も飛び交っているが、同氏はその点についても明言しなかった。

▽他店の顧客への販促にはデータを使わない方針

小売店向け自動決済技術の販売をめぐっては、買い物客のデータをだれが集めて保有するかという問題も浮上している。商業主は通常、顧客情報を集めて管理することを非常に重視する。それらのデータをもとに、消費行動分析や効果的販促の決定に役立てることができるためだ。したがって、ジャスト・ウォーク・アウトの採用に踏み切る小売会社がどれほどあるのか不透明、という見方もくすぶっている。

ジャスト・ウォーク・アウトの場合、領収書を望む来店客は、店内に設置されるキオスクに自身の電子メール住所を入力すれば、小売店に関係なくアマゾンから電子領収書が送信される。そのことから、ジャスト・ウォーク・アウト・プラットフォームでの買い物情報(決済額と購入者のクレジット・カード情報、電子メール住所)についてはアマゾンが集めて保存することになる。

ただ、買い物代金の請求と領収書以外については、「それは小売店の顧客だ(アマゾンの顧客ではない)」とクマール氏は話し、販促や宣伝の領域には関与しない考えを示した。

【reuters.com/article/us-amazon-com-store-technology/amazon-launches-business-selling-automated-checkout-to-retailers-idUSKBN20W0OD】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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