新型コロナウイルス感染症(コーヴィッド19)の拡大を防止するための接触追跡アプリケーションの活用が欧州各国で広まっている。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、接触追跡アプリケーションは現在、ドイツとフランス、イタリア、イギリス、アイルランドを含む欧州各国で導入または試験運用されているが、いまのところ公衆衛生専門家たちが望んだほどの普及率には達していない。
▽ドイツ、欧州最大の導入事例に
接触追跡アプリケーションは、欧州以外では、中国とインド、イスラエル、シンガポール、オーストラリアですでに導入済みで、その効果については入り交ざった経過が報告されている。欧州以外での導入では、欧州諸国ほどの厳しいプライバシー保護法がない環境で運用されている。したがって、欧州以外での活用効果と欧州でのそれを直接比較することは難しい。
ドイツでの導入は欧州最大の事例だ。予定より数週間遅れての導入となった背景には、データ保護をめぐる政府内部の議論が長引いたためだ。
6月10日に行われた調査では、接触追跡アプリケーションの利用に前向きなドイツ国民は41%にとどまり、46%は使わない、と答えた。8%はスマートフォンを持っていなかった。
同アプリケーションが感染第二波の防止に効力を発揮するには、人口の60%が使う必要がある、と防疫専門家らは考えている。その見方は、マスクや手洗い、社会的距離(social distancing)といったほかの対策の効果を加味していない。
▽接触記録を利用者個人のスマートフォンに保存
ドイツが導入した接触追跡アプリケーションは、ドイツ・テレコムとSAPによって設計された。アップルとグーグルのモバイル端末向けOSに対応した設計だ。
ドイツの同アプリケーションでは、政府が管理するサーバーではなく、各個人の携帯電話にデータを保管する手法がとられた。イタリアが導入した接触追跡アプリケーショ ンでも同じ手法が採用された。
同アプリケーションを実装したスマートフォンは、同じアプリケーションを実装したほかのスマートフォンが2メートル以内の位置で15分以上存在すると、ブルートゥース経由で相手のアプリケーション・コードを記録する。
利用者は、新型コロナウイルスに感染した場合、それを自主的に接触追跡管理システムに通知する必要がある。同システムは、その通知を受けると、当該利用者(感染通知者)と接触したスマートフォンに通知し、ウイルス検査の必要性を進言する。
▽模擬化で80%の精度
同アプリケーションの開発に際しては、公共交通機関の利用やレストランでの食事といったさまざまの状況(筋書き)での模擬化が実行された。模擬化された状況の80%では、政府の指針に則った警告が適切に送信された。
ドイツ社会民主党の議員で疫病学者でもあるカール・ローターバッハ氏は、大半の人がマスクを着用し、社会的距離や手洗いを励行すれば、同アプリケーションを人口の20%が使うだけでも防疫効果がある、と話した。
ドイツ保健省のイェンス・スパーン長官は、外出規制が解除されて人々の接触が増えるにつれ、同アプリケーションの有用性が高まる、と話した。感染可能性を当該者に効果的かつ効率的に通知する方法は同アプリケーション以外にない、と同氏は述べた。
▽イギリスは分散型を選択
ドイツ以外の欧州諸国では、フランスが6月2日に同様のアプリケーションを導入し、11日までに150万件のダウンロード件数を記録した。いまのところ、感染可能性を通知した事例は数回に留まっている。フランスの場合、利用者データを中央サーバーに保管する。ほかの国のアプリケーションとは互換性がない。
イタリアも6月2日に同アプリケーションを導入し、これまでに200万件以上のダウンロードを記録した。
イギリスでは、一極集中型のアプリケーションの構築ではなく、分散型アプリケーション群の設計を選んだと報じられた。イギリスの取り組みでは、アップルとグーグルが開発したAPI(application programming interface)を通じて、これから開発されるアプリケーション群が近接接触データを交換できるようになる。
かたやノルウェイでは、16歳以上の人口の約14%が接触追跡アプリケーションをダウンロードしたが、プライバシー管理当局から問題を指摘されたため、最近、その使用が停止された。
【wsj.com/articles/coronavirus-contact-tracing-apps-launch-across-europe-amid-hopes-for-broad-adoption-11592319612?mod=tech_lead_pos2】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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