自動車メーカーは、需要の回復に対応するため米国内の組立ラインを加速させている。新型コロナウイルスに関しては安全対策の導入で工場内での感染は防げるとの自信を強めている一方、労働者が施設の外で直面する感染リスクを警戒している。
■行動に規制なし
ロイター通信によると、自動車メーカーは検温や質問を通じたスクリーニングによって、病気なののに出勤した労働者を特定できるようになった。一部の工場は消毒のために操業を一時停止したが、5月18日にほとんどの工場が再開されてからは、今のところ国内の自動車工場で大きな感染は発生していない。発生すればメーカーは工場の閉鎖を強いられ、1日数百万ドルの損失が生じる可能性がある。
工場内では、主要メーカーと全米自動車労働組合(UAW)が共同開発した安全対策が導入され、労働者はマスクとフェイスシールドを着用し、6フィート離れて座るか立ち、接触を避けるといったルールが守られている。
しかし工場の外では、全国的にマスクの着用や社会的距離(ソーシャル・ディスタンシング)の励行を無視する動きが広まっており、UAWの副委員長でフォード部門代表を務めるジェラルド・カリーム氏は「ひとたび職場を離れれば、人々はそれぞれのやり方で行動する」と、決まりがないことを懸念している。
■暑さ対策も課題
トヨタは最近、工場がある州の一部でコロナ感染者が増加していることを受けて、米国内の工場従業員に職場の外でも職場で使っている安全手順に従って行動するよう、あらためて奨励した。同社は「Safe Anywhere(どこでも安全に)」のスローガンを採用している。
広報担当者によると、トヨタはこれまでに出勤した工場従業員で新型コロナの症状やリスク要因を報告した人の中から40人の感染者を特定しており、監督者や労働者は常に、工場の生産を再開した際に決めた安全手順の改善に努めているという。
業界全体の懸念として、気温や湿度が上昇するに従い、常に体を動かす組立ラインでのマスク着用がどの程度の不快感をもたらすかという問題がある。トヨタでは上部に電池で動く小型ファンが付いたフェイススクリーンを試験導入している。フォードでは、独自でマスクを量産しているため労働者に1日5枚まで提供できるようになった。
■チャイルドケア
一方、コロナ流行による混乱は別の課題も引き起こしている。ケンタッキー州ルイビルにあるフォードのピックアップ・トラック工場では、感染拡大を受けて1000人以上を自宅待機にしたが、需要の高いトラック生産の再開にあたって従業員が職場に戻って来られず、臨時社員で穴を埋める状態になっている。
UAW支部の話では、チャイルドケアが従業員にとって重要問題になったため、多くの労働者がいったん失業者となり、連邦の新型コロナウイルス経済救済法(CARES)の適用を受けて増額された失業保険を受け取っている。フォードは現在、組合労働者のために支援付きチャイルドケアの提供を始めており、この制度を導入したケンタッキーなどではCARESの適用を受ける人の数が減っているという。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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