新型コロナウイルスの感染拡大で、米国では多くの州で3月半ばから公立学校や大学が閉鎖され、オンライン授業に移行した。
ベンチャービート誌によると、オンライン授業にはそれに適した音声や動画の活用法があるが、教員側にはそういったソリューションを構築する時間も知識もない。そこで、人工知能(AI)を使った音声合成技術がオンライン授業に応用されるようになり、授業の効率化と同時に教員らの負担軽減にも寄与している。
■先生がコンテント制作者に
コロナの大流行を受けて、突然の授業オンライン化に直面した教員らは、各種教材をオンライン学習用に用意する必要に迫られた。その結果、教員らにはコンテント制作者としての役割りが加わった。音声合成技術開発会社ロボ(LOVO)のトム・リー共同創業者はこうした事態について「教育者はプロのポッドキャスターでもなければユーチューバーでもない」「(教材や授業を)録音することも、マイクに向かって話すことにも慣れていない」と、問題を指摘する。
リー氏によると、オンライン授業を成功させるには、パワーポイントのスライドや文字情報の教材だけでは不十分だ。学生・生徒には音声や動画の教材に直観的に反応する傾向があるためで、オンライン授業に適した音声と動画は受け手の注意を引きつけ、学習効果を高めるという。
特に経験が浅い教員の場合、授業の準備と録画に長時間を要し、学生指導といったほかの大切なことに使う時間が削られるという課題に直面する。また、2時間といった長い講義では内容の一貫性を保つことも難しい。
■音声合成と読み上げで労力軽減
それらの問題を解決する手段として、AIを利用した音声技術が注目されている。AI技術を使って教員の声を合成し、作成した教材や説明をソフトウェアが自動的に読み上げることで、2時間もマイクに向かって授業を録画するといった作業から教員を開放できる。
同技術は、複数の会社によってすでに提供されている。リー氏によると、ロボのソリューションの場合、利用者が録音する数分程度の音声をサンプルに使って音声を複製する。いったん複製すれば、あらゆる単語や文章を音声に変えることができる。
音声ファイルを動画やスライドに追加することによって、教員は授業の準備にかかる労力を大幅に削減できる。その結果、教員がマイクの前に座って授業や講義を録画する必要がなくなる。また録画後に間違いを見つけた場合でも最初から録画し直す必要はなく、ワード(Word)ファイルの修正と同じように(音声合成の基になる)テキストを編集するだけでよい。
デジタル学習はコロナ後の時代の「新しい常識」になると、リー氏は予想する。学校や大学も、デジタル学習の価値や効率性、コスト削減効果を認識し始めているという。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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