ウイルス感染対策の接触追跡アプリケーションの効果は期待はずれ ~ 普及率の伸び悩み、プライバシー侵害を懸念か

スマートフォンとモバイル・アプリケーションを活用した他人との近接接触追跡機能は、新型コロナウイルスの防疫対策として期待されるが、いまのところその効果は限定的だ。CNBCが報じた。

▽普及率世界最高のアイスランドでも効果は限定的

世界各国で導入されているそれらのアプリケーション群は、ウイルスに感染したことが判明した人と一定の距離内で一定の時間以上接触した人に感染可能性を通知して検査と自主隔離をうながすことで感染拡大を抑制する。

経済活動が世界各地で徐々に再開されるなか、接触追跡アプリケーションは効果的な防疫策として期待されるものの、新型コロナウイルス感染状況に関する日々の情報収集にその種のアプリケーションを活用していた英国政府は現在、同アプリケーションへの依存を見直し、対策を練り直している。

その種のアプリケーションの普及率では、人口約36万4000人のアイスランドが38%を記録し、5月に公表された調査報告書では世界でもっとも普及した国と位置づけられた。

スマートフォンのGPSデータを集めるアイスランドのアプリケーションは、世界最高の普及率にもかかわらず「決定的影響を与えるほどではなかった」とアイスランドの新型コロナウイルス接触追跡副検査官ジェスチャー・パルメイソン氏は指摘する。

▽効果を発揮するには人口の60%が使う必要

オックスフォード大学の研究者らによると、同アプリケーションが防疫策として効果を発揮するには、人口の60%以上がダウンロードして実際に使う必要がある。

現時点で、同アプリケーションが感染抑止に「決定的効果を発揮している」といえる国は一つもない、と技術リサーチャーのステファニー・ヘア氏は指摘する。

接触追跡技術活用の先駆的存在と位置づけられるシンガポールでは、同アプリケーションのダウンロード件数が約210万件に達し、人口比で約37%の普及率を記録した。それでも60%には遠く届かない。ただ、中国と韓国では、デジタル追跡策が一定以上の防疫効果を示した、といわれる。

▽GPS基盤の位置追跡を採用して失敗したノルウェイ

一方、ノルウェイの場合、データ保護当局高官らの警告を受けて、その種のアプリケーションの使用を停止した。ノルウェイが導入した追跡アプリケーションは、アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)が「もっとも要警戒の大衆監視ツール群」リストに追加したほど、データ保護に落ち度があった。同リストには、バーレーンとクウェイトのアプリケーションも載っている。

ノルウェイの追跡アプリケーションは、利用者らのGPS基盤位置データを集めて記録し、ほかのスマートフォンとの接触データを処理して中央システムに保存する。

アップルとグーグルが共同開発した接触追跡アプリケーション向けプラットフォームに代表されるよう、ほとんどの国が導入しているその種のアプリケーションは、個々の位置(GPS)データを記録しない。また、接触データを個々のスマートフォンに分散保存する非中央化システムによって個人データおよびプライバシーの保護に対応した設計となっている。

▽GPSの代わりにブルートゥースを使うフランスでも実質的効果なし

フランスが導入した追跡アプリケーションは、スマートフォンのブルートゥースを使って感染確認者との接触を検出する。GPS機能を使わないことでプライバシーを保護するというのがブルートゥース活用の意義だ。

アップルとグーグルのモデルを採用しなかったフランスのアプリケーションは、約190万人にダウンロードされたが、接触通知を受けたのはこれまでにわずかに14人で、実質的に効果なし、とみなされる。

アップルとグーグルのプラットフォームは、アップルがiOS端末用に義務付けるプライバシー保護規定によって、接触データを中央データベースに保存することを禁止する。現在、それが標準設計となっているため、位置データ(GPSを使って記録されるデータ)や接触データ(ブルートゥースを使って別のスマートフォンとの近接を検出するデータ)は個々の利用者のスマートフォンに保存されたのち、約2週間後に消去される。

▽ドイツ、大国のなかでは効果を有望視される

その種のアプリケーションを導入する国や自治体としては、関連データのすべてを中央システムに集めて分析することで防疫策に役立てたいと考えている。そのため、その点を重視する国は、アップルとグーグルのプラットフォームを土台としない設計を選ぶことになる。

ドイツは、両社のプラットフォームを基盤とするアプリケーションを採用した。これまでに1400万人がダウンロードしており、プライバシー保護に対応した追跡アプリケーションを導入した主要国としてはその効果がもっとも有望視されている。

一方、英国政府は、データを中央データベースに保存しなければ、実質的な防疫効果を期待できない、と考えた国の一つだった。ただ、プライバシーを侵害するアプリケーションを導入すれば、ダウンロードする人数が増えないため、導入する意義が初めからない、という課題に直面する。

したがって、利用者数(追跡アプリケーションのダウンロード件数)を増やするなら、利用者プライバシーを保護するアップルとグーグルの共同構築モデルを土台とするアプリケーションを選ぶ必要がある。

▽追跡アプリケーションと大量検査、徹底的社会的距離の併用が重要

しかし、両社のプラットフォームにも限界はある。たとえば、GPSを使った位置追跡データではなくブルートゥースによる近接接触追跡記録に依存すれば、ブルートゥースの検出範囲の狭さに起因する偽陽性の増加という問題を避けられない。

両社のプラットフォームは、プライバシー保護のために後者を採用している。ブルートゥースよりGPSの方が効果はあるが、プライバシーが犠牲となる。プライバシー擁護派はそれでも、アップルとグーグルのプラットフォームが現時点における最善の選択だと考えている。

ブルートゥースを使った接触検出および追跡には限界があるため、それだけでは防疫策として到底不十分だ。したがって、追跡アプリケーションに加えて大量検査と、より厳格な社会的距離の徹底が不可欠となる。

【cnbc.com/2020/07/03/why-coronavirus-contact-tracing-apps-havent-been-a-game-changer.html】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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