世界の企業は2020年、新型コロナウイルスの感染拡大が引き起こした財務の悪化を乗り切るため、新たに1兆ドルの債務を抱えるとの予想を、英国の資産運用会社ジャナス・ヘンダーソン(Janus Henderson)が発表した。
■借りる目的が一変
ロイター通信によると、ジャナスは世界の大手企業900社の企業負債指数を分析した最新報告書で、世界の企業債務は20年に前年比12%増えて約9兆3000億ドルに達し、最も債務の多い企業は中規模の国家に匹敵する借金を抱えることになると指摘した。
企業の債務は19年も前年比8%と大幅に増加したが、合併や買収、自社株買いや配当の資金を調達するための借り入れが中心で、新型コロナによる収入減への対応を理由とする20年の急増とは内容がまったく異なる。ジャナスのポートフォリオマネジャー、セス・マイヤー氏は 「新型コロナですべてが変わった。今は資金の節約とバランスシート強化が重点だ」という。
■高リスクの債権発行が激増
20年1~5月、企業は債券市場で3840億ドルを確保しており、マイヤー氏は信用格付けが低く高リスクの「高利回り」企業の債券発行額がここ数週間で過去最高を記録したと見ている。3月は最も信頼できる企業を除いて貸付市場は閉鎖されていたが、その後、米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、日本銀行といった中央銀行の緊急企業債購入プログラムによって再び広く開かれている。ジャナス報告書の900社は、すでに14年よりも約40%多い債務を抱えており、債務の伸びは利益の伸びをはるかに上回っている。900社の税引前利益は全体で9.1%増の2兆3000億ドルとなったが、自己資本に対する負債の割合を示すギアリング比率は19年に過去最高の59%に達し、利益に占める利息支払いの比率も最高となっている。
■ほぼ半分は米企業
世界の企業債務のほぼ半分に相当する3兆9000億ドルは米国企業が抱えており、主要経済の中では大型のM&Aが続いたスイスを除き、過去5年間の増加率が最大となっている。2位はドイツで7620億ドル。ドイツには世界で最も負債の多い企業3社があり、トップのフォルクスワーゲン(VW)は南アフリカやハンガリーなどの国家債務とあまり変わらない1920億ドルの負債を抱えている。
一方、900社のうち4分の1はまったく借金がない。それどころか巨額のキャッシュリザーブを持っているところもあり、そのトップはグーグルの持株会社アルファベットで、1040億ドルの現金が手元にある。マイヤー氏によると、与信市場はまだコロナ前の状況に戻る可能性があるが、現在のウイルス感染者の増え方、特に最近の米国での急増は投資家の大きな懸念で「2カ月前よりも予想が困難な状況だ」という。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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