車の重要部品である半導体の供給がひっ迫している。一部の半導体価格は上昇し、出荷は遅れ、自動車メーカーは工場の稼働を休止。問題が続けば新車価格が上昇する恐れがある。
■コロナ禍に5G需要
ウォールストリート・ジャーナルによると、パンデミックによる遠隔勤務の広がりでノート型パソコンの需要が急騰し、クラウド電算サービスやそれを支えるデータセンターの重要性も高まった。加えて、第5世代(5G)移動通信システムに対応する携帯電話向けの需要の高まりで、半導体製造能力が圧迫されている。また、米国が華為技術(ファーウェイ)を排除したことで、通信機器市場のシェア争いも激化している。
半導体工場はすでに生産能力の余裕がなく、自動車と家電メーカーが限られた量のチップを取り合う状態。注文への対応にも時間がかかっており、業界全体のリードタイム(発注から納品までの期間)はパンデミック前の8-10週間から今は 6カ月に延びている。
半導体を供給するナビタス・セミコンダクター(カリフォルニア州)は、一部の顧客でシリコンのリードタイムが26週間を超えているという。台湾の分析会社トレンドフォースによると、半導体の受託製造世界最大手TSMCは最先端チップの生産稼働率が約90%となっており、2021年は設備投資を前年から47%以上拡大する。米国の業界大手グローバル・ファウンドリーズ(加州)も、生産量を増やすため21年は設備投資を前年の2倍に増やした。
■自動車業界に深刻な打撃
半導体不足は広範囲に及ぶが、自動車産業への影響は特に著しい。車載用半導体の大手NXP(オランダ)は、顧客に半導体不足が深刻なため全製品の価格を引き上げると通知した。マイクロチップ・テクノロジー(アリゾナ州)も予約や受注残が過去最高に達しているが、生産量の制約は続く見込みで、一部の製品のリードタイムは40週間を超え、値上げの必要に迫られている。
半導体製造装置業界の調査会社VLSIリサーチは、自動車業界には需要回復を見越して早くから発注しなかった責任があると見ており「娯楽システムや運転支援機能を強化するための半導体使用が増えるに従って、供給網をもっと適切に管理する必要がある」と指摘する。
解決には時間がかかる見通しで、トヨタは「不足は春まで続く」と予想。多くの自動車メーカーは1月末までの生産計画を変更しており、GMは、サプライヤーに半導体を1年分備蓄するよう要請している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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