新型コロナウイルス禍による世界的なサプライチェーン問題を受け、3D(立体)印刷による交換部品の調達への関心が急速に高まっている。
■コスト削減効果は絶大
ウォールストリート・ジャーナルによると、シェブロンはオーストラリアで540億ドルのゴーゴンLNG事業を進めているが、部品不足で予定するメンテナンスが遅れて費用が拡大することを恐れ、予備対策として地元の3D印刷業者アディティブナウ(AdditiveNow)に同じ部品を作れるかどうかの実証を依頼した。結局、輸入部品は納期までに到着したが、シェブロンはアディティブナウの部品の仕様に強い感銘を受け、将来のプロジェクトで使うために同社から知的財産を取得し、3D印刷の研究開発作業を1年加速させた。各業界とも、部品1個の不足で業務停止に追い込まれると莫大なコストが生じる可能性があり、それに対応した形だ。
■大量の在庫は不要に?
3D印刷はこれまで、コストや印刷速度などの問題が業界を制約してきたが、世界的な輸送コストの上昇と新しい技術によってその魅力が高まっている。港の混雑や船舶の不足で貨物の輸送代は最近の最高値からは落ち着いたものの、高止まりの状態だ。また、3D印刷会社3Dメタルフォージのマシュー・ウォーターハウスCEOによると、一部の顧客は3D印刷を大量の部品在庫を持たなくてすむ方法としても見ているという。
こうした在庫は保管に費用がかかり、従来のサプライヤーから供給する場合はミニマムオーダー規定があるため、使い切る前に部品が時代遅れになることも多い。3Dメタルフォージ(3D Metalforge、オーストラリア)やアディティブナウのような企業は、在庫を分析して3D印刷に適した部品を特定し、テストや認可を支援する前に設計や製作工程を開発している。
用途は部品だけにとどまらない。総合エンジニアリング会社の日揮グローバルは、建設工事における3Dプリンタの本格導入に向けた取り組みの一環として、バイオマス発電所の建設現場で構造物を造り、工期、コスト、品質など導入効果の検証作業を行う計画だ。
オーストラリア軍も現場での3D印刷の活用を研究している。陸軍ロジスティクス責任者のディーン・クラーク中佐は「約10分で20インチのレンチが印刷されるのを見た。すぐに印刷して車両に使えた」と話している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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