自動車業界の幹部は、労働市場のひっ迫や半導体不足など短期的な懸念はあるものの、業界の長期的な収益性や電気自動車(EV)の普及については概ね楽観視していることが、会計事務所KPMGの調査で分かった。
■米中の幹部はより楽観的
オートモーティブ・ニュースによると、KPMGの「2021年国際自動車業界幹部調査」は8月、世界の自動車メーカー、サプライヤー、新興企業などのCEOや部門責任者1118人を対象に実施された。その結果、53%が「業界は今後5年間により収益性の高い成長を達成できると確信している」と回答し、「懸念している」との答えは38%にとどまった。
国別に見ると、米国と中国の幹部が最も今後の収益性を楽観視していた。米国幹部の楽観は、全米的なEVおよび先進モビリティー関連の新興企業の成長と、伝統的な自動車メーカーによる大規模な関連投資に起因すると考えられる。
ただし短期的には大多数の幹部が、半導体、鉄鋼やアルミなどの基本材料、レアアースやリチウムなどEVの電池に必要な材料の供給問題を懸念していた。同時に、幹部57%は、関税や貿易規則などのコストや複雑さが今後5年間で高まると予想。低下すると予想したのは17%にとどまった。
業界が半導体不足や新型コロナウイルス禍への対応を強いられる中、経営幹部の82%は「自社が業界の次の大きな危機に備えて少なくとも中程度の準備ができている」と考えており、「少し準備できている」は15%、「まったく準備ができてない」は3%だった。ここでも米国の幹部は他の地域よりも楽観的だった。
■EVは10年で軌道に
EVに関しては、政府が導入の義務付けや目標を設定するのに伴い「市場は今後10年で世界的に軌道に乗る」と予想している。平均では、30年までに米国、中国、日本で販売される新車の52%がEVになり、西欧では48%、ブラジルでは41%、インドでは39%を占めると予想した。
ただし、EVのシェアがどれだけ伸びるかについては5-90%と予想に大きなばらつきがあった。77%の幹部は「政府の介入がなくてもEVは10年以内に普及する」と見ているが、91%は「消費者向けの補助金が役立つ」と見ている。
EV普及の障害となり得る要因は充電にかかる時間で、77%は「電池を80%以上充電するために消費者が待てるのは30分以内」と考えている。それを達成するにはDC(直流)急速充電器を増やす必要があるが、設置には10万ドルもの費用がかかる可能性があり、現在米国ではEV充電器の20%未満にとどまっている。
また業界リーダーは、車の販売方法が変化し続けると見ており、78%は「30年までに世界の新車購入の大部分がオンラインで行われる」と予想。また46%は「30年までに新車販売の60%以上が自動車メーカーによる消費者への直接販売になる」と考え、「直接販売は40-59%」とみる人は28%、「20%以下」はわずか3%だった。
さらに幹部の約74%は、今後5年以内に車を購入しようとしている消費者にとって非常に重要なのは「切れ目なく手間のかからない」体験と見ており、運転性能(71%)およびブランドやイメージ(64%)などの要因を上回った。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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