新型コロナウィルスの新変異株オミクロン株の出現で、多くの企業が在宅勤務の導入を急いだ感染流行の初期のような状況に逆戻りしているが、在宅勤務に必要なビデオ会議機能は企業にとってもはや大した技術的課題ではなく、それをどうデジタル変革の取り組みにつなげるかが重要になっている。
■大手がズームに対抗
ウォールストリート・ジャーナルによると、かつてビデオ会議アプリは企業活動を続けるための最優先ソフトウェアだったが、最高情報責任者(CIO)らは現在、作業の自動化や人工知能(AI)などより複雑なテクノロジーの活用の方がコロナ禍で一変した市場を生き残る上ではるかに重要な取り組みと考えている。
これはビデオ会議システム開発のズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(カリフォルニア州)にとっては問題となる可能性がある。同社のビデオ会議ツールは、企業が社員同士をつなぐための頼れるアプリとして登場し、売り上げが急増。オンライン利用者数は2019年12月の1日当たり1000万人から20年4月には約3億人に達した。しかしその後はマイクロソフトやアルファベット傘下グーグルといったはるかに大手の技術企業が、業務用アプリの中核機能に含まれることが多いビデオ会議プラットフォームに新機能を追加し、ズームは迅速な技術革新で対抗する必要に迫られている。
調査会社グローバルデータの主席アナリスト、ローラ・ペトロン氏は「ズームが企業を相手にするIT大手から顧客を引き離すことは容易ではない」と指摘する。住宅改装用品販売のホーム・ディーポの場合、ほとんどの技術チームや他の事業部門がまだ在宅勤務を続けているが、社内外の会議には「マイクロソフト・チームズ」とシスコ・システムズの「ウェブエックス」の両方のビデオ会議ツールを使っており、マット・キャリーCIOは「近くこれらのアプリを切り替える予定はない」という。
■新しい勤務形態
ズームはこの1年で、オンライン会議の前、最中、後に使えるデジタル・ホワイトボードやリアルタイム自動翻訳ツールなど、ビデオ会議関連の新機能や何百ものアップグレードを発表。また、デスクや会議室を予約するためのインタラクティブマップを備えたアプリといった、物理的なオフィススペース管理支援を目的としたサービスなど新しい分野にも取り組んでいる。
ギャリー・ソレンティーノ副CIOによると、企業のCIOにとって現在の課題は、コロナ流行の前や在宅勤務体制に入った直後には存在しなかった出勤と在宅を組み合わせるハイブリッド戦略など、全く新しい勤務形態に対応する技術の配備になっている。ソレンティーノ氏は「もはや1つのアプリでは従業員の進化に適応するための柔軟性と敏捷性を維持できない」と話し、「その全てを行うには孤立化した製品ではなく、より柔軟で魅力のある包括的なソフトウェアツールのセットが必要になる」と見ている。
IDCは、協業アプリの世界市場は25年までに500億ドルを超え、20年比でほぼ2倍に拡大するものの、今後数年で成長ペースの鈍化が始まると予想している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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