業界初の活け締め自動化機械で鮮魚流通に革新 ~ シンケイ・システムス、人道的かつ良質の漁獲を人工知能で実現

一般的に市販される鮮魚は、実際にはそれほど新鮮ではない。漁船から水揚げされた魚が仲買人または卸売業者から小売業者や外食大手らを経て消費者の口に入るまでには何日かかかる。また、魚を殺す方法も非人道的だ。テッククランチ誌によると、そこに解決策を提示する新興企業シンケイ・システムスが登場し、鮮魚の流通に革新をもたらしつつある。

▽従来型漁業が解決できない数々の課題

ニューヨーク市拠点のシンケイ・システムス(Shinkei Systems)は、魚の新鮮さを保ちながら人道的に処理する業界初の自動化機械を開発した。

一般的な欧米の漁業では、網を引き上げて大量の魚を甲板に放り出し、大まかに選別したあと、氷のうえに放置するか容器のなかに移す。その間、魚はバタバタと動き回り、数分から数時間後に窒息死する。そういった方法は、残酷なだけでなく、魚に極度のストレスを与え、傷口や血液中のバクテリア、筋肉中の乳酸によって肉の劣化を加速させる。

個人的な漁師や一本釣りの小型漁船なら、釣り上げた直後に頭部をたたいて即死させ、エラ付近を切って血と内蔵を取り出すという処理をする。あるいは、釣り上げた魚を水槽に移して漁港で水揚げするまで生かしておく漁師もいる。それによって肉の劣化を避けられる。

▽日本の活け締めには多くの利点

日本にはもっといい方法がある。「活け締め」という伝統的方法だ。活け締めは、もっとも人道的であるだけでなく、肉の新鮮さを保てるため、窒息死した魚より何日間も何週間も長持ちし、味もずっとよい。活け締めされた魚には、ストレスを感じる暇もなければ、傷口や血中のばい菌類、肉中尿酸によって劣化する時間もない。

ただ、釣り上げ直後に脳を針で一突きし、即死させて血抜きし、脊髄を破壊する活け締めは一種の特殊技能で、だれでもすぐにできるという方法ではない。

▽10~15秒に1匹を自動で活け締め

その活け締めと同様の効果のある処理方法を機械化かつ自動化しようというのが、シンケイ・システムスを共同設立したセイフ・カワージャ氏のねらいだ。

同社は、釣り上げたばかりの魚を10~15秒に1匹の速度で活け締めにする機械を開発した。

大型冷蔵庫くらいの大きさのその機械には、ホッパー(入ってくる魚を受け取って次に流し込む器具)や操作空間、魚を氷水に移し入れる部分が備わっている。機械視認(computer vision)が内蔵された同システムは、魚の種類や形状を識別し脳の位置を正確に特定して活け締めし、血抜きしてさばく過程を自動化する。

▽機械学習基盤の機械視認で脳の位置を正確に特定

「ロボティクスは現在、難しい外科手術を可能にするほど高精度になっている」「われわれは目標は、漁師たちの手をわずらわせることなく簡単操作で活け締めを自動化することだ」とカワージャ氏は話した。

同社が活用する機械学習基盤の機械視認は、同じ種類またはほぼ同じ大きさや形状の魚でも脳の位置がわずかに異なることから、膨大な種類と量の魚の脳の正確な位置を人工知能に学習させ、すべての魚に同社の自動活け締め機を使えるようにした、と同氏は話した。

▽欧米での和食需要増を背景に130万ドルを調達

同社の機械で活け締めされた魚は、血合いが少なく味がよく、日持ちもするという。近年、欧米の大都市では寿司や和食が一般化しつつあり、生魚の需要が急増し、消費者の舌も肥え始めている。

シンケイ・システムスの自動活け締め機は現在、きわめて限定的な市場しか開拓できないが、寿司や和食の需要増を考慮すれば、活け締めする漁船が増えることは確実とみられる。

そういった見込みを背景に、同社は、1月に開始したプリ=シード・ラウンド(pre-seed round)の資金調達で7月末までに総額130万ドルを集めたことを明らかにした。同社は現在、さらなる投資を募集中だ。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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