薬局チェーン全米第2位のウォルグリーンズ・ブーツ・アライアンス(Walgreens Boots Alliance)は、全国的な薬剤師や調剤技師の不足に対処するため、ロボットを使って業務量の軽減に取り組んでいる。
■人はサービスに専念
ウォールストリート・ジャーナルによると、同社は自動化された中央制御の調剤拠点網を構築しつつあり、拠点施設はそれぞれ面積が都市の街区1ブロックほどもある。中では一列に並んだ黄色いロボットアームが伸縮、回転しながら、色とりどりの錠剤を処方せん通りに分類して容器に詰め、ベルトコンベヤーに送り出している。
ウォルグリーンズによると、処方薬の自動調剤システムによって薬剤師の仕事量は少なくとも25%減り、年間10億ドル以上の経費を節約できるという。最終的には、薬剤師が予防接種、患者の対応、一部の薬の処方といった医療サービスに費やす時間を増やすことが目標。ドラッグストアにとってこうしたサービスは比較的新しい収入源で、一部の臨床サービスの料金は保険会社に請求できるようになりつつある。
■新型コロナで負担が激増
新型コロナウイルス禍によって薬局に対する各種検査やワクチン接種の需要が高まり、従業員の負担が増えたが、多くのチェーン店は必要な数の薬剤師を雇うのに苦労している。ウォルグリーンズも国内約9000店舗の3分の1で薬局の営業時間を短縮し、薬剤師を確保するため雇用契約の締結時に最大7万5000ドルのボーナスを提供している地域もある。
同社の調剤センターでは、数十~数百人の従業員が、ぜん息の吸入器用などロボットでは充てんできない薬を扱ったり、プロセスを監督したりしている。一刻を争う薬や規制薬物の処方は、今でも店舗の薬剤師が対応している。自動調剤センターで調剤された薬は、店舗で分類・処方される薬と一緒にアメリソースベルゲン(AmerisourceBergen)の物流部門によって店に届けられる。
■4~5割の自動調剤が目標
ウォルグリーンに自動調剤のソフトウェアや技術を提供しているのは、インディアナポリスに本社を置くアイエー(iA)だ。同社は病院や薬局など数百の事業体が展開するチェーン向けに、国内で約1000カ所の処方センターを運営している。処方薬の量は、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)前に比べておよそ2倍に増えており、iAのアリシア・ラシエル最高自動化責任者は「薬局は処方薬取り扱いという日常的な作業の排除を考えている」と話す。
ウォルグリーンズは、パンデミックで薬局の人員不足が深刻化する前から調剤の自動化を計画し、iAに4億5000万ドルを出資して過半数株式を取得していた。リナ・シャー副社長(薬局戦略担当)によると、調剤自動化によって薬剤師がこれまでできなかった基本的な仕事をこなす時間ができ「健全に人員が配置された場所では、持病を持つ客に医療計画を守るよう促すなど、薬剤師はさまざまな役立つ医療サービスを提供でき、患者の健康を向上させられる」という。同社は、最終的に全処方薬の40~50%を調剤センターで処理することを目指している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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