自動走行車、商機は商用分野に〜豪州鉱山ではすでに活躍

 米国では現在、配送用バンや運送トラック、トレイラーなどを動かすプロの運転手が約570万人いるが、商用車市場は今後、ほぼ20年かけて自動走行車への移行が進みそうだ。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、オーストラリア西部のピルバラにある鉄山では、すでにキャタピラーが自走式の鉱業用240トン・トラック「793f」を6台使って鉄鉱石を運んでいる。2650馬力のこのトラックは、2500万行を超えるソフトウェア・コードに従って急勾配の道を自動走行している。従来、ここではドライバー4人が1日24時間体制で勤務していたが、今では道に障害物があっても、乗り越えるか避けて通るか車が判断できるため、作業に関わる人間と言えば何マイルも離れた管制室で監視している技術専門家だけだ。キャタピラーは最終的に同鉄山の自走式トラックを45台に増やす予定で、180人の専業運転手はほとんど不要になる。

 自動走行車の話題は今のところ、グーグル・カーなど乗用車分野に集中している。しかし、自動走行技術によって巨額の金が動き、変化が予想されるのは商用車分野だ。現在国内に2億5300万台ある商用車のコストは劇的に減り、米経済に大きな影響を与えると見込まれ、米国トラック協会(ATA)のエンジニアリング・安全政策責任者テッド・スコット氏は、「自動走行トラックの普及はほぼ不可避」とみている。

 大型トラック105台を所有する運送会社ロード・スコラー・トランスポート(ペンシルベニア州)のジェイムズ・バレット社長も「トラックは無人式になる。そこに大きな金が絡むからだ」と話した。トラック会社は現在、15%のドライバー不足に直面しているが、トラックが自分で動けば人手不足に悩む必要はなくなり、労災、給与税、健康保険なども不要になる。一般的に、フルタイム運転手の人件費は福利厚生含めて年6万5000〜10万ドルに上り、自走式トラックの購入に40万ドルかかったとしても短期間で元が取れる。

 もちろん、実際のコストの推定は難しい。自走式トラックは少なくとも最初は専用レーンか道路わきの無線標識に沿って走ることが必要とみられ、基盤整備のコストは莫大になるだろう。また、ほとんどの業界関係者は「判断力が一貫した自走式トラックの方が最終的に人間の運転より安全になる」と考えているが、それを当局や一般市民に証明するには時間がかかる。

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