GMの幹部人事〜サプライヤーの見方

 GMの幹部クラスの新人事は、デトロイトのサプライヤーの幹部によって好感を持って迎えられた。北米のオペレーションを仕切る社長から、商品開発のトップへのマーク・ルースの異動を前向きな人事だと受け止められた。また、前の商品開発の責任者だったメアリー・バラがCEOに昇進したことも、エンジニアリングとテクノロジーの優先順位が上がる前兆だ。一方、ダニエル・アマンの新社長就任は、サプライヤーの幹部の中には、改善されつつあったGMとサプライヤーの関係性をぶち壊しにする人事だと見る者もいる。

 ルース氏にとって人事異動は勝利とは言い難い。彼はCEOになったバラに先を越されたからだ。しかし、エンジニアであり、GMの元社長ロイド・ルースの息子としては、最適なポジションに収まったと言える。それが多くのサプライヤー幹部の見方だ。4年前にオーストラリアのGMのホールデンのオペレーションから復帰後、エンジニアリング部門のトップとしては比較的短期間の在任期間中、サプライヤーとの関係性はより協力的な方向に動いた。ルースはサプライヤーと月例の商品開発会議を開催し、当時の購買責任者ボブ・ソーシアの考え方を変えていった。バラはサプライヤー幹部にあまり知られていないが、実際はシボレー・シルバラード発売の際に、GMのエンジニアをサプライヤーの工場に派遣させた責任者だった。よって、(彼女には)部品サプライヤーとの間の協力関係の軌跡がある。

 問題は、新生GMにおいて、バラとアマン、どちらが強大な権力を握ることになるかだ。アマンはもともと自動車に情熱を傾けるタイプのようだが、過去のGMのCOOのようなエンジニアとしての経歴を持ち合わせていない。CFOだった彼の専門分野は財務である。サプライヤー幹部たちはOEMのクリスマスパーティーで、彼の役割に対して緊張の色を隠せなかった。彼がGMに価格破壊の風土を呼び戻すのではないかと危惧したからだ。それでも、彼がGMとサプライヤーの関係を変えてしまうと結論付けるのは早計だ。購買担当幹部のグレース・リーブラインはアマンの直属ではなく、ルースの指示を仰ぐ。ルースのやり方は基本的にサプライヤーに最良の技術を提供させるものであり、より安い競合相手に寝返るような恐れはない。

 サプライヤー幹部の中には、GMがサプライヤーに提示された技術に対して、より安い価格を比較して購入してきた長年の実績から、果たしてGMが永久に誠実なパートナーでいてくれるかどうか、懐疑的な者もいる。GMの倒産後の経営陣が、サプライヤーから最良の技術を提供されていないのではないかと心配したのはそれが原因だ。しかい、ルースは過去に「あなた方が、真に素晴らしいアイデアを我々と共有してくれるのであれば、報われる。このアイデアに対してだけでなく、将来のビジネスでも報われることになるだろう」とのメッセージを送っている。問題は、新たな経営陣が過去3年間に交わされた約束を忠実に守るかどうかという点である。

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