米国、サイバーセキュリティー人材不足が深刻化 〜 調査会社ランドが報告

 米国はいま、サイバーセキュリティー人材不足のさらなる深刻化に直面している。

 コンピュータワールド誌が報じたランド(RAND)の調査によると、サイバーセキュリティー専門家の需要は2007年から急激に強まっているが、サイバーセキュリティー技術者の増加はその需要にまったく追いついていない状態が続いている。

 その背景には、インターネットに接続する機器の数や種類の拡大、機会の激増に加え、金融機関や小売チェーン大手、インターネット・サービス大手に対するハッカーによる攻撃が増えたことがある。さらに、能力の高いサイバーセキュリティー人材の引き抜きも増え、セキュリティー専門家の給与高騰も引き起こされている。

 もっとも深刻なサイバーセキュリティー人材不足に陥っているのは米国政府だ。ランドのマーティン・ロビツキー氏は、企業各社が高給を提示して人材を確保していることから、その高給に対抗できない政府機関に優秀な人材が集まっていないことを指摘する。

 現在、米国の上級サイバーセキュリティー専門家の給与は、年間25万ドル以上が相場だ。

 ただ、初級から中級水準のサイバーセキュリティー専門家を集めることはさほど困難ではない、とロビツキー氏は話す。

 一方、大学のセキュリティー教育や組織内のセキュリティー研修、セキュリティーに関する意識向上によって、人材不足は向こう数年間で落ち着くと予想される。また、ランドは、給与高騰によって、電算工学や通信工学といった別分野の人材がセキュリティー分野に転向することから、人材不足がある程度解消されると予想する。

 ランドでは、セキュリティー専門家への依存度を下げるために、企業や政府機関が、より高度のセキュリティー機能を備えた電算および情報管理システムを導入すべきだと指摘する。

 IT人材全般については米国外から人材調達する手段が浸透しているものの、サイバーセキュリティーに関してはそれは現状打破するのに不適切だとランドは主張する。

 ランドによると、人材流動はすでに国際化しており、これ以上の技術人材が米国に流れ込めば、給与低下を引き起こし、米技術業界への人材流入が妨げられる可能性がある。

 また、連邦機関の場合、就職するには厳しい身上審査に合格する必要があることから、サイバーセキュリティー職ではその審査を通過する外国人材はそれほど多くないという実情もある。

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