野菜栽培に挑戦する日本の電子機器業界 〜 休眠工場をハイテク制御農園に
- 2014年7月11日
- ハイテク情報
日本の消費者電子製品業界が苦境に立たされるなか、家電大手各社は休眠状態の工場を農業に転用している。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、富士通の福島県会津若松工場で半導体の製造部長だった宮部治泰(みやべはるやす)氏は2013年に、工場長から「仕事の内容が変わるから準備しておくように」と言われ、「明日からレタスを作りなさい」と命じられた。
富士通は2009年に、業界低迷から、同工場に三つあったチップ生産ラインの一つを廃止した。宮部氏は現在、かつてハイテク機器の頭脳を組み立てていたクリーン・ルームで、部下約30人とともに水耕レタスを栽培している。レタスは洗わずに食べられる「キレイヤサイ」として、富士通の名を冠して売られている。
一方、東芝は6月に、20年間使われなかった東京近郊の元フロッピー・ディスク工場で野菜を生産する計画を発表した。また、パナソニックは、ホウレンソウを育てるコンピュータ制御温室の販売を2014年中に始める計画。シャープも、ドバイの屋内施設で独自の照明と空気清浄技術を使ったイチゴ栽培の実験を始めた。
従来の日本政権は、利益を生まない不振事業を支援するだけだったが、安倍晋三首相は新事業への挑戦を奨励し、電子機器業界が生まれ変わることを願っている。安倍氏はまた、小さい農地で高齢者が働く現在の仕組みだと食料価格が高くなるため、農業に大手企業が参入することで価格が下がると考えている。
富士通は当初、会津若松工場の新事業について、2011年の東日本大震災と津波の被害に遭った福島県の復興を支援する国の計画から資金を得た。
日本政府はその後、最先端農業に関する補助金の対象を全国に広げた。政府統計によると、富士通のようなハイテク栽培工場は過去3年間で4倍以上に増え、380ヵ所を超えている。
富士通の工場では、従業員が実験用の白衣とマスクを着用し、清潔な環境を保っている。水には肥料と養分が加えられており、同社によると、レタスを同手法で育てることでカリウム含有量を減らし、カリウムを消化できない腎臓病の高齢者でも食べられるレタスができる。
ただ、東京近郊のスーパーマーケットでは、富士通のレタスは小さな袋一つが約300円という高額で売られており、普通のレタス一玉より100円ほど高い。
東芝は、ハイテク栽培事業で利益を出すには大規模生産が必須となる、と話す。同社は年間300万個のレタス生産を目指しており、2015年度までに年間売上高が3億円になると予測している。
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