EAの打診を拒否したソニーの判断は正解か 〜 購読制ゲーム・サービスめぐり

 ソニーは、ゲーム開発大手エレクトロニック・アーツ(EA)が提供するゲーム購読サービス「EAアクセス」の採用を拒否した。ソニーの対応に関しては、専門家のあいだで意見が分かれている。

 EAアクセスは、オンライン映画レンタル大手ネットフリックスと同様のビジネス・モデルのサービスで、月額5ドルでゲームをダウンロードし放題というのが売りだ。

 EAは同サービスをプレイステーション向けに売り込むためにソニーに打診したが、ソニーはそれを拒否した。その結果、マイクロソフトがエックスボックス・ワン(Xbox One)向けにEAアクセスを独占提供することになった。

 フォーブス誌によると、業界専門家のなかには、ソニーの判断を「愚か」だと批判する声もある。EAアクセスは入会が義務付けられておらず、利用者の選択肢として提供されるというのが、ソニーの決定を批判する専門家らの理由だ。

 ソニーは、EAからの打診を断った理由として、「EA専用プログラムに5ドルを追加で払わせることが、プレイステーションの利用者にとって有益と思わない」と説明。また、ソニーが利用者に対して逐次再生サービスを自ら提供していることも拒否理由だと指摘される。

 その一方で、ソニーの判断が正しいと解釈する専門家も多い。フォーブスに寄稿するコラムニストのエリック・ケイン氏もソニーの判断を支持する一人だ。

 同氏によると、EAアクセスがネットフリックスと異なるのは、利用者が「EAのコンテントのみ」に対して月額5ドルを支払うという点だ。

 それに対してネットフリックスの場合、月額購読料を支払えば、利用者は、ネットフリックスが再放映権を取得したすべての映画製作会社やテレビ番組制作会社のコンテントを視聴できる。

 ケイン氏によると、現在、逐次再生ゲーム市場にはEAアクセスとソニー自身のサービスしかないが、遅かれ早かれ他社が同様のサービスを提供し始めると予想される。

 ソニーにとっては、第三者の個々のゲーム購読サービスをプレイステーションで受け入れるとなると、最終的にはソニーの顧客サポートがそれぞれのサービスの利用者サポートに対応しなければならなくなる。

 実際、マイクロソフトが提供するEAアクセスの約款を読むと、全ての質問への対応をマイクロソフトが請け負うことになっている。利用者は、EA専用の口座も開設しなければならない。

 さらに、利用者はサービスを解約すれば、すべての有料コンテントへのアクセスを失い、無料と有料のコンテントの区別がつかない利用者を混乱させることになる。

 ケイン氏は、ゲーム購読サービスが増え続ければ、そうした問題が増幅されるのは明らかだと説明する。

 そうした意味で、ソニーがゲーム逐次再生サービスを簡素化し、ゲーム提供会社とのあいだに一定の距離を保つと判断したことは賢明と言えるかもしれない。

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