IBM、サイバーセキュリティーに照準 〜 次なる中核事業として強化に注力

 IBMは1960年代あたりにはメインフレームで名を馳せ、その後はデスクトップ型パソコンで一世を風靡し、さらにその後には消費者向けハードウェアから離れて法人向けITサービスに移行し、最近では、人工知能のワトソン(Watson)による大規模データ(Big Data)分析に注力している。

 そしていま、IBMは次なる中核事業としてサイバーセキュリティーに照準を合わせる方針を打ち出した。

 マーケットウォッチ誌によると、IBMは5日、クラウド版のセキュリティー製品群を披露し、法人向けセキュリティー市場の開拓にかける姿勢を明示した。

 「ハイブリッド・クラウド・モデル(hybrid cloud model)」と名付けられた同事業には、クラウドに移行する企業のための数々のセキュリティー管理製品がある。

 IBMは、Q1ラブズ(Q1 Labs)を買収したことでセキュリティー技術専門家のブレンダン・ハニガン氏を2011年に雇って以来、セキュリティー関連の研究&開発に総額10億ドル以上を費やしてきた。

 IBMは現在、1日に150億件以上のセキュリティー監視を追跡している。

 IBMは約10年前にはパソコン事業をレノボに売却し、最近ではx86系サーバー事業を同じくレノボに売却、さらに、半導体事業をグローバルファウンドリーズに譲渡し、ハードウェア事業からの撤退を進めてきた。

 ハードウェア事業はソフトウェアやサービスに比べて薄利で競争が激烈という前提がその背景にある。ただ、セキュリティー事業がハードウェア事業に比べてうまみのある分野かといえば、必ずしもそうではない。

 エンドポイント・テクノロージズ・アソシエイツのロジャー・ケイ氏は、法人向けサイバーセキュリティー事業について、「進出しても進出しなくても失敗したと思わされる難しい領域だ」と指摘する。

 同氏によると、クラウド市場は今後、ハードウェア事業よりも薄利になる可能性が高く、セキュリティー市場となると競争がきわめて激しく、利益率の高い事業として成功させるのが非常に困難になると予想される。

 一方、IBMのジニー・ロメティー最高経営責任者(CEO)は、「われわれには非常に明確な戦略がある」「セキュリティーを強調しても強調しすぎることはない」と話している。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

最近のニュース速報

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  2. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  3. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  4. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
  5. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  6. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  7. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  8. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
ページ上部へ戻る