人型ロボットのアトラス、電源を内蔵 〜 競技会決勝に向け進む完全無線化
- 2015年1月26日
- ハイテク情報
ロボティクス企業のボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)は、人型自律ロボットのアトラス(Atlas)に電源装置を内蔵したことで、ケーブルによって外部電源装置とつながれる必要のない新型のアトラス・アンプラグド(Atlas Unplugged)を開発した。
アトラス・アンプラグドは、米国防高等研究計画局(ダーパ、DARPA=Defense Advanced Research Projects Agency)が主催する被災時救助および復旧作業ロボット競技大会の決勝戦に出場するロボットの代表格。
ダーパでは、2011年3月の東日本大震災を受けて、災害時の救助や復旧作業に貢献するロボットの開発を後押しするために、ダーパ・ロボティクス・チャレンジ(DARPA Robotics Challenge=DRC)というロボット能力競争大会を主催し、約2年前から予選を開催している。
DRCは、東京大学の研究から独立したロボティクス新興企業のシャフト(Shaft)が予選を首位通過したことでも知られる。ただ、シャフトはその後、グーグル(Google)に買収され、独自の研究開発に専念するために本戦出場を辞退している。
パイオニア・ニュース誌と米国防高等研究計画局によると、身長約185cmのアトラス・アンプラグドは下脚部と足部を除くすべての部分が改良され、胴体部分の主要構成品は軽量化され、容量3.7キロワット時(kWh)のリチウム粒子蓄電池を内蔵することで、歩行をはじめさまざまの自律運動を60分間持続できる。
そのほか、通信用の遠隔ルーターも内蔵され、手首の回転機能も向上した。また、与えられた指示内容の処理方法を考える三つの認知機能も新たに組み込まれた。
ロボットはいまや、通信でも電源でも完全無線状態で稼動し、転倒や落下、なにかにはまるといった事態に直面しても自力で立ち直り、停電時にもある程度の時間は自己電源で作業できる能力を備えつつある。
ダーパでは、DRCの第二次予選のあと、外部電源の使用禁止という新たな条件を設定したため、決勝戦に勝ち進んだロボティクス企業や大学のロボティクス研究班たちは、予選で使ったロボットに電源を内蔵させる改良を続けている。
2013年末にグーグル(Google)に買収されたボストン・ダイナミクスはDRCに出場しないが、決勝戦出場が決まっている11チームのいくつかにアトラスを提供している。
DRC決勝戦出場がすでに決まっているチーム
▽IHMC Robotics (Florida Institute for Human & Machine Cognition, Pensacola, Florida)
▽Tartan Rescue (Carnegie Mellon University, National Robotics Engineering Center, Pittsburgh, Pennsylvania)
▽Team MIT (Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, Massachusetts)
▽RoboSimian (NASA Jet Propulsion Laboratory, Pasadena, California)
▽Team TRACLabs (TRACLabs, Inc., Webster, Texas)
▽Team WPI-CMU (formerly Team WRECS, Worcester Polytechnic Institute, Worcester, Massachusetts)
▽Team Trooper (Lockheed Martin Advanced Technology Laboratories, Cherry Hill, New Jersey)
▽Team ViGIR (TORC Robotics, Blacksburg, Virginia; TU Darmstadt, Germany; Virginia Tech, Blacksburg, Virginia; Oregon State University, Corvallis, OR)
▽Team THOR (University of California, Los Angeles, California)
▽Team Valor (Virginia Tech, Blacksburg, Virginia)
▽Team KAIST (Daejeon Metro City, Republic of Korea)
アトラス・アンプラグドを採用する出場チームは、独自のソフトウェアやアルゴリズムを開発することで、作業能力や認識力、判断力を向上させ、2015年6月5〜6日に開かれる決勝戦に臨む。
決勝戦はカリフォルニア州ポモナのフェアプレックスで行われる。出場チームの上位3組には順に200万ドル、100万ドル、50万ドルの賞金が贈られる。
ダーパによると、欧州連合や日本、韓国の政府に支援されたいくつかのチームも決勝戦に出場するとみられる。
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