飲食店のチップ廃止は進むか〜ピッツバーグでも1店が宣言

 チップ制をやめる飲食店が各地に登場し、新しい業界の流れとなるかどうか注目されている。

 クリスチャン・サイエンス・モニターによると、ペンシルベニア州ピッツバーグで2011年に開店したカジュアル・レストラン「バー・マルコ」は、この4月からチップを廃止する。店員には年間3万5000ドルの基本給を支払う予定で、諸手当には医療保険や自社株購入権も含まれる。

 共同オーナーのジャスティン・スティール氏は「雇用の質を維持したい。やらなければ3年後には営業上のリスクが高まると考えた」と話す。欧州では給仕係を専門職と見る文化があるため、給料も高く、年俸制が一般的だ。これに対し米国では、給仕は定職が見つかるまでの、あるいは家計を助けるための臨時収入源と見られることが多いが、近年は客の情けに頼って最低賃金に幾らか上乗せする制度を変えようとする店が現れた。

 カリフォルニア州グレンデイルの「ブランド158」も、昨年初頭からチップを廃止した。オーナーのゲイブリエル・フレム氏は「チップ制は店員同士を競争させる。従業員の生活を安定させれば、彼らは接客に集中できる」と考えている。ケンタッキー州ニューポートの「パックハウス」は、パート店員に時給10ドルまたは当日の総売上高の20%のいずれか高い方を払っている。

 ブランド158とバー・マルコではチップ廃止前後でメニューの値段に変わりはないが、パックハウスは客が20%前後のチップを置かなくて済む分値上げしており、店員が受け取る報酬は平均して時給15ドル。

 レストランがチップ制廃止に踏み切る主な動機は、バー・マルコのスティール氏が言うように労働者の質を保つことにある。労働統計局(BLS)によると、レストランやホテル業界の13年の平均転職率は62.6%と他業界より20ポイントも高かった。

 20世紀初頭、チップ制は多くの州で禁じられていたが、1920年代には禁止が撤廃され、全米で定着した。現在、給仕の時給は7州を除く全州で連邦最低賃金より大幅に安く、今も2.13ドルという州もある。これはチップを得る職業に対して連邦が定めた最低賃金で、1991年から変わっていない。

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