バークリー市、電磁波警告条例で訴訟に直面 〜 携帯通信業界、同市を提訴

 カリフォルニア州バークリー市は、携帯電話から出る高周波電磁波が癌を引き起こす可能性を問題視し、安全警告の表示を義務づける条例を可決した。携帯電話業界ではそれに対し、反発する訴えを起こしている。

 ニューヨーク・タイムズによると、2015年5月に満場一致で可決された同条例は、「知る権利法」と呼ばれるもので、「衣服のポケットなどに携帯電話を入れておくと、連邦政府の設定した指針を越える電磁波にさらされる危険性があり、特に子供はそのリスクが高い」という警告を8月から表示するよう携帯電話販売店に義務づけている。

 携帯電話と癌との相関関係は明確には立証されていない。しかし、法案の作成にかかわったマックス・アンダーソン議員は、「科学的な確証がなくても、リスクがあれば慎重に対応すべき」とほかの議員たちに呼びかけ、法案を成立させた。

 それに対し米セルラー通信工業会(CTIA)は、「携帯電話をどのように身につけても安全」と主張し、「誤った表示を販売店に強制することはできない」と反発。

 CTIAは、条例が可決された数週間後に、合衆国憲法修正第1条項違反でバークリー市を訴えた。サンフランシスコ連邦地裁では8月6日に公聴会が予定されており、同訴訟の結論が出るまで条例は実施されない。

 携帯電話の安全性に関しては、業界側の主張を支持する医師や学者も多い。カリフォルニア大学デイヴィス校のジェロルド・ブッシュバーグ放射線腫瘍学教授は、「エックス線が電離放射線を放出し、使いすぎると人体に癌などの悪影響をおよぼす可能性があることは事実だが、携帯電話からは電離放射線が出ないため、人体に影響はない」と主張する。

 「癌との相関性に関しては、多くの医者や科学者が研究に取り組み、50年以上にわたって悪影響がないか徴候を探してきたが、見つかってない」「あり得ないとはいえないが、あってもリスクは非常に低いはずで、そうでなければすでに脳腫瘍が増加しているはず」「早くから携帯電話が普及し、優れた癌管理制度を持つスカンジナビアの国々でも、そういった徴候はみられない」とブッシュバーグ氏は指摘する。

 ローレンス・バークリー国立研究所のロバート・カーン上席科学者も、「放射線が出るというだけで危険とはいえない。乳幼児モニター機器や車庫ドアの開閉装置、無線ルーター、スマート・メーターといった各種の機器類も、微量の電磁波を放出するが危険性は立証されてない」と指摘する。

 一方、市民の反応はまちまちで、「警告されても携帯電話の扱い方を変えるつもりはない」という人もいれば、「受動喫煙や遺伝子組み換え食品に関する表示と同様に、少しでもリスクがあれば常に表示した方がいい」と話す人もいる。

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