パリで開かれた国連気候変動会議に合わせて、開発銀行や企業、投資家から数兆ドルという巨額の環境投資計画が表明され、その多くが蓄電分野に流れる可能性があるとみられる。
グリーンテック・メディアによると、デンマークのコンサルティング会社インコテコ(Incoteco)のヒュー・シャーマン主宰は、「再生可能エネルギーが化石燃料の代わりとして成功するには、5600テラワットに上る世界電力業界の大きな部分を蓄電が担わなければならない」と指摘する。
また、ラックス・リサーチ(Lux Research)のコスミン・ラスロー上席分析家は、断続的な再生可能エネルギー発電が増えるにつれ蓄電が拡大することは避けられず、「蓄電市場は最終的には数千億ドルに成長するだろう」と話している。
有力な業界ブログ「エネルギー・マターズ(Energy Matters)」は、11月における欧州の風力発電実績を調査した結果、発電できる時間とできない時間が欧州全体で同期する傾向にあると指摘。「欧州のほとんどで風がなく、予備電源が100%必要である状況が多々生じていた」と、著者のユアン・ミアーンズ氏は説明した。
その見方は、元フラウンホーファー協会のグレゴール・シジック氏が2000年代に発表した研究結果と相反している。同氏は、地理的に分散させて欧州全域に再生可能エネルギーの発電所を設置することで、不安定性を解消できると主張していた。
地理的分散の有効性に疑問が投げかけられるならば、送電網の相互接続に対する投資価値にも疑問が生じることになる。欧州委員会は、送電網運営会社が2020年までに400億ユーロ(430億ドル)を投じて相互接続を確立する必要があると見積もっている。
蓄電の重要性は米国市場でも意識されるようになっている。太陽光発電と蓄電を組み合わせる技術を開発するフォーカスト・サン(Focused Sun)のショーン・バックリー最高経営責任者はそれについて次のように話している。
「太陽光発電が1%だった時代は、太陽電池を設置した人が曇った日に予備電源をどれだけ使用するかを電力会社は気にかけなかった。しかし、カリフォルニアを筆頭にいくつかの場所で、再生可能エネルギーを50%にするという目標が掲げられるようになっている。そこで電力会社は需要電力料金を重視するようになった。が、6時間分でも蓄電があれば、正午の発電ピークを夕方の負荷ピークにずらすことができる。これはだれにとっても好都合の話だ」。
世界の二大汚染国である中国と米国には、すでに発達した電池産業がある。どちらも今後、蓄電池技術の発展を推し進めるだろう。
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