チームのために何でもやる
僕にはサッカーしかない

Text by Keiko Fukuda / Photo by Noriko Carroll/Las Vegas Japan Times ©2017

メジャーリーグサッカー参入を目指すラスベガス・シティFCで始動したばかりの田島翔選手に、サッカーについてアメリカで追い駆ける夢について聞いた。

サッカー選手・ラスベガスシティFC
田島翔

高校卒業後のFC琉球に始まり、サッカーをプレイするために日本国内外のクラブに所属してきた田島選手。今回のラスベガス・シティ入団のきっかけはマイアミ時代に生まれた。

「マイアミとベガスとで練習試合をした時に、ラスベガス・シティFCのオーナーと話をする機会がありました。親日派のオーナーから『いつか日本で子供たちのサッカースクールを開校したい』という話を聞き、僕自身も子供たちに教えていたことがあり、またラスベガスの華やかなイメージにも憧れていたので、オーナーに履歴書を送りました。そこで興味を持っていただき、所属することになったのです」

田島選手のサッカーへの憧れのルーツは三浦知良選手にあるそうだ。

「僕が小学生の時にJリーグが開幕しました。自分も絶対にプロサッカー選手になりたいと思い、逆算して高校はどこに行けばいいのか、と計画を立てました。サッカー以外の選択肢はありませんでした」

しかし、その道のりは怪我との闘いでもあった。

「中学の時には疲労骨折と靭帯損傷で、3年生の大切な試合に出ることができず、ほぼ無名状態。強豪校への進学が叶いませんでした」

そこで高校卒業後、挽回するために、自分でチームへの売り込みを開始。Jリーグ参入を目指していたFC琉球への入団を果たした。

「Jリーグでプレイしていた選手が半分以上という顔ぶれ。しかもアドバイザーがラモスさんだったということもあり、目の前に憧れていた人々がいる、一緒にプレイできる、と非常に楽しい日々でした」

沖縄生活は4年に及んだが、怪我が原因で、故郷の北海道へ。リハビリを終えた後は初の海外チームとなるスペインに向かった。

「スペインには2年いました。日本との違い? チームに対する愛着が非常に強いことですね。皆、家族のように絆が強くて、オーナーも監督も一緒に食事をしたりと密な交流を経験させてもらいました。片言ですけどスペイン語も多少はわかるようになり、現在のラスベガスでも、メキシコ系の選手がいるのでコミュニケーションを図るのに役立っています」

その後はロアッソ熊本に入団。Jリーグの選手になるという夢を、プロになって10年目で叶えた。しかし、試合に出場する機会はほとんどないまま退団。ニュージーランド、米マイアミを経て、ラスベガスにやってきた。

絶対にあきらめない

「ラスベガスは若いチームです。ブラジル人やメキシコ人選手と世界中から、若いプレイヤーたちが夢を求めて集まっている、非常に可能性があるチームだと思います。実は34歳の僕が最年長。まずはメジャーリーグに参入できるように選手として関わっていきたいですし、チームを強くするということにどうやったら貢献できるかを考えて行動していきたいと思っています。できることは何でもやる覚悟です。これまでのサッカー人生、何度も怪我でやめようと思ったこともありますが、やはり僕にはサッカーしかないんです」

プロのサッカー選手をめざす少年少女へのメッセージを聞いた。

「絶対にあきらめないことが大切。サッカーがうまい人を大勢見てきました。でもいくら上手でも途中で燃え尽きたらそこでおしまいです。最終的にあきらめない人が生き残ります。それから自分の飛び抜けた特徴的なプレイを伸ばすことも重要ですね」

34歳にしてラスベガスでの新たなキャリアのスタートラインに立った田島選手。好きなサッカーを続けたいという彼の夢、チームをメジャーに参入させたいというラスベガス・シティFCの行く末を見守りたい。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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