ウェディング&イベントコーディネーター
オウ・ジサ

文/福田恵子 (Text by Keiko Fukuda)

 高度な資格や専門知識、特殊技能が求められるスペシャリスト。手に職をつけて、アメリカ社会を生き抜くサバイバー。それがたくましき「専門職」の人生だ。「天職」をつかみ、アメリカで活躍する人たちに、その仕事を選んだ理由や、専門職の魅力、やりがいについて聞いた。

「カリブ海のリゾートで 夢のイベントをフルカスタマイズ」

 私の仕事は、顧客のイベントをフルカスタマイズするために、理想のイメージと予算を聞いて、選択肢となるプランを紹介した上で取捨選択して完成していくというものです。ウェディングでは準備開始から1年かけることもあります。ドレスや髪飾り、花、会場設営、写真撮影、式の運営はもちろん旅行会社紹介までを含みます。

 もともとはアート関係の仕事に携わるのが夢でした。高校時代にロサンゼルスのOTISという美術専門カレッジのことを聞き、そこで勉強したいと憧れるようになりました。そこで女子美術大学の短大で基礎を学び、20歳で渡米、OTISへの入学を果たしました。卒業後はいったん日本に帰国して、社会人としての経験を積むために米系の企業で秘書として働いた後、再渡米。ビジネス、そして経営学をより深く学ぶためにMBAコースで学び始めましたが、自分自身のホテル業界への深い興味に気付き、さらにその中でもウェディングとイベント部門に魅かれるようになったのです。華やかなこと、そして何より、自分自身のアートのバックグラウンドが生かせるというのがその理由です。

 結果的に、フィラデルフィアのドレクセル大学院でホスピタリティー経営と米国内の海外のリゾート経営、グローバルツーリズムなど、観光関連のコースを修め、さらにウェディングプランナー養成機関で、ウェディングイベントプランニング、プレストン・ベイリー、ウェディングイベントデザイン、環境にやさしいウェディングプランニングなどのコースを修了しました。修士論文を書いていた時は、カリブ海のジャマイカに足を運び、ホテルのオーナーに取材し、現地でのウェディングの状況を視察して回りました。その頃には、自分で独立してコーディネーション会社を起こすと決めていました。ホテルに就職するよりも、自分でビジネスを手がけた方が醍醐味も感じられるし、顧客とも密接にやりとりすることができると思ったからです。また、当時、既に双子の母にもなっていたので、会社勤めよりも起業した方が、育児との両立もしやすいのではないかという考えもありました。

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トラブルには柔軟な対応が鍵

 起業して3年目になります。リゾートウェディングに力を入れており、特にカリブ海がその舞台です。カリブでの式の写真を見ると、とにかくその美しさに目を奪われます。エキゾチックな雰囲気、きれいな海と大自然、これらも私がカリブを好きな理由です。しかし、コーディネーターならではの苦労もありました。最初の壁は、ずばり、アメリカ、カリブ海諸国でのカスタマーサービスの質の違いです。

 日本人の顧客は質の高いホスピタリティーに慣れています。しかし、アメリカ、カリブ海ではカスタマーサービスに対しての考えにギャップが多々あるため、顧客の要望と、ベンダーの対応の差を埋めることが課題でした。それで、フラワーアレンジメント、ホテルでのサービス、ケータリングの内容まで、一つひとつ細かく確認してフィードバックしていきました。それらのコミュニケーションも、努力した甲斐があって、今では立派に改善されたと思います。何より、ベンダーからの新規顧客の紹介を多数もらえていることが、彼らとの良好な関係を築けた証だと受け取っています。

 この仕事に向いているのは、何事にもフレキシブルに対応できる人です。完璧に準備しても天気が悪いとか、自分がコントロールできない範囲でのトラブルは起こりえます。その時にパニックになるのではなく、柔軟に対応しなければなりません。そして、「イエスしか言えない人」は向いていません。予算とロケーションの問題で、現実的にできないこともあります。それを何でも「できます」と答えてしまい、やっぱりできないのではそれが最大の問題になってしまいます。

 目標は、カリブウェディングを手がける企業としてトップ3に挙げられるようになることです。そのためにも一つひとつのイベントに、お客様の期待以上の結果を出していかなければいけないと思っています。

 私は子供の頃から直感を信じて突き進むタイプでした。失敗したことも、もちろんあります。でも、親が「頑張らないとわからないことは多いから、頑張ってみたら」といつも言ってくれるのが心の支えになっています。

Photo by Ayano Hisa

Photo by Ayano Hisa

My Resume
●氏名:オウ・ジサ(Jisa Oh)
●現職:ウェディング&イベントコーディネーター(Vena Amoris Events, Inc.代表)
●前職:秘書(日本)
●取得した資格:Master of Science in Hospitality Management with Global Tourism、Bachelor of Fine Arts in Digital Media、Lovegevity Wedding & Event Planning Certification
●ビジネス拠点:アメリカ国内及びカリブ海沿岸諸国
●その他:ロサンゼルスに8年在住、東海岸に6年在住、そして2014年にフロリダに転居。住まいもカリブ海諸国の現場に近くなった。
●ウェブサイトなど:www.VenaAmorisEvents.com

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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