ラスベガスが旧正月を祝うのは今年が初めてではない。1990年代から始まったが、最近は参加するリゾートホテルの数が増え、特に高級ホテルが大金をつぎ込んで装飾の豪華さを競うようになった。
もちろん背景には、急増する中国人観光客を呼び込もうという狙いがある。
経済成長と旅行規制緩和で、海外旅行をする中国人の数は急増中。今年初めて、1億人を突破する見通しだ。商務省などのデータでは、2012年にアメリカを訪れた中国人観光客は前年比35%増の150万人。2020年には、3倍以上の570万人になると見られている。
旧正月は中国人にとって一番大切な祝日で、この時期に旅行する人はさらに増える。中国本土だけでなく、香港や台湾、ベトナムなど旧正月を祝うアジアのほかの国からも訪問者が見込めるし、アメリカやカナダに住む中国系の移民たちも同様だ。
そんなわけだから、ラスベガスも燃える。大手リゾートホテルの関係者に聞くと、「ラスベガスの旧正月の準備は15カ月前から始まる」という。ただ派手にそれっぽく見せればいいというものではなく、中国人が見たときに失礼に当たらないように、飾りやメニューに縁起が悪い数字や文字を入れないといった気配りもしている。
「中国人観光客=チープな団体おのぼりさん」と思っていたら大間違いだ。1回のアメリカ滞在で、中国人観光客が費やす金額は平均5948ドル。外国人旅行者全体の平均4370ドルよりだいぶ高い。ラスベガスの超高級ブランド店は、中国人向けのサイズや好みのカラーの商品をしっかり揃えて待っている。
人生は今よりもよくなるという前向きな消費意欲と上昇志向で、世界各地の経済を生き返らせている中国人。数年前、東京・銀座のガラガラのデパートで、沈み込む日本人を横目に、元気に買い物しまくってくれていたことを思い出す。
ラスベガスは、リーマン・ショック後の最悪な状態を抜け出し、活況を少しずつ取り戻している。カジノの収益だけで食える時代は終わり、ストリップからは激安ホテルが姿を消した。高級ナイトクラブやショッピングなど多様な魅力で新しい顧客層に売り込み中のラスべガスと、中国人観光客。両者のムードが、うまくかみ合っているようだ。
来年は「羊年」。どんなデザインになるのか、リゾートホテルの人に聞いてみると…。「It’s definitely going to be bigger and better!」。昨今のアメリカではなかなか聞かれない、元気な答えが返ってきた。
取材協力/Special thanks to Las Vegas Convention and Visitors Bureau
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