祝W杯優勝サッカー女子アメリカ代表が凱旋パレード

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

 サッカーの女子ワールドカップ(W杯)カナダ大会で、日本代表「なでしこジャパン」に圧勝し、16年ぶりの優勝を果たしたアメリカ代表チームが帰国し、ロサンゼルスとニューヨークで開かれた凱旋ラリーとパレードで、ファンの祝福を受けた。

'We Are The Champions"を合唱するアメリカ代表=ロサンゼルスで Photo © Mirei Sato

“We Are The Champions”を合唱するアメリカ代表=ロサンゼルスで
Photo © Mirei Sato

 7月10日に行われたニューヨークのパレードで、選手たちは、ローワー・マンハッタンのブロードウエー沿いを、車に乗って市庁舎まで進んだ。
 これは「Canyon of Heroes」(英雄たちの峡谷)と呼ばれるルートだ。メジャーなスポーツでニューヨークの地元チームが優勝すると、ここをパレードするのが恒例になっている。野球のヤンキースや、フットボールのジャイアンツなど。通り沿いの高層ビルやアパートの上階から、オフィスで働く人や住人たちが、窓を開けて、紙吹雪を降らせるのが名物だ。
 今回、ナショナルチームがパレードするのは初めてで、さらに女子のスポーツにその栄誉が与えられたのも初めて。ファンが、ニューヨーク市長に嘆願して実現した。

練習のたまもの

 

最優秀選手に輝いたカーリー・ロイド選手 Photo © Mirei Sato

最優秀選手に輝いたカーリー・ロイド選手
Photo © Mirei Sato

カナダから帰国直後の7月7日には、ロサンゼルスのダウンタウンで、数千人のファンが集まって優勝を祝うイベントがあった。
 日本との決勝で前半16分間で3得点を決め、大会最優秀選手に輝いたカーリー・ロイド選手(MF)は、イベント終了後の記者会見で、「すべてこの日のためにやってきたことが実を結んで、あんな形で勝てたなんて、夢のよう。今日集まってくれた大勢のファンを見て、ようやく実感がわいてきた。ゴールシーンのハイライトを見ると、まだ信じられなくて、鳥肌が立つ。歴史の一部になれたことは一生忘れない」と語った。
 前半16分、フィールド中央からロングシュートを放ち、キーパーの頭上を越えて決めたゴールについては、昔、毎日何度も練習させられたプレーだったという。「まさかW杯決勝で決めるなんて思ってもいなかったけれど、本能が動いた。練習した甲斐があった」と話した。

過去最高視聴率

FOXテレビで生中継された日本との決勝戦は、2540万人が視聴。「アメリカ史上、最も多くの人が見たサッカーの試合」となった(*これまでの記録は昨夏の男子W杯ブラジル大会でアメリカとアルゼンチンが戦った試合の1820万人)。これは、今シーズンのNBAファイナルの試合や、大リーグの試合よりも多い。また前回の女子W杯(2011年)で、日本とアメリカがぶつかった決勝戦(*日本がPK戦の末に優勝)の視聴率に比べて、89%ものアップだという。視聴率15.2%という数字も、サッカーの試合としては最高記録を塗り替えた。スペイン語放送のテレムンドでも、過去最高の130万人が見た。
 アメリカは1999年に自国開催した女子W杯で、中国を破って優勝した。ミア・ハムらスーパースターを擁したチームは大旋風を巻き起こし、アメリカにサッカー文化を根付かせただけでなく、女子スポーツの地位向上にも大きく貢献した。
 日本との決勝で3点目を入れたローレン・ホリデー選手(MF)は、「時間はかかったけれど、サッカーというスポーツを育てることができたと思う」と振り返った。また、今大会を最後に代表を引退すると明らかにし、「サッカーに自分のすべてを捧げてきた。これからは人生の新しい1章。この10年は代表を選んできたけれど、これからは家族(夫はNBAペリカンズのジュルー・ホリデー選手)を選びたい」と涙ながらに話した。
 チーム主将のクリスティー・ランポーン選手(DF)は、今大会代表メンバーの中で唯一、99年のチームにも所属して優勝を経験している。「99年に比べるとファンの数もメディアの露出も増え、プレッシャーもあった」「(一過性の盛り上がりではなく)国内のリーグ戦にもスポンサーが増えて、多くのファンが足を運んでくれるといい」と話した。

女性として……

2人のベテラン・チームリーダー。アビー・ワンバック選手(左=FW)とクリスティー・ランポーン選手(DF)=ロサンゼルスで Photo © Mirei Sato

2人のベテラン・チームリーダー。アビー・ワンバック選手(左=FW)とクリスティー・ランポーン選手(DF)=ロサンゼルスで
Photo © Mirei Sato

 女子サッカー選手は、男子選手に比べると、契約金もスポンサー収入も圧倒的に少ない。それでも日本の女子代表に比べれば、アメリカ女子代表の生き方は多様で、結婚して子育てもして、同性婚カップルもいる。
 負けは悔しかっただろうが、日本の女子サッカーを取り巻く環境やファンにとっては、よい手本、よい刺激になったのではないか?
 40歳で2人の子供の母親でもあるランポーン選手にそう聞いてみると…。
 「日本とアメリカでは文化の違いがあるのはわかる」と前置きしながら、「日本の選手たちには、女性として、これからますます、結婚や出産もできるようになってほしいし、フィールドの内と外のバランスをとりながら、選手として長いキャリアを築いていってほしい」と話していた。

国内リーグ、これからがシーズン終盤!

National Women’s Soccer League (NWSL)

現在、アメリカの女子サッカー国内リーグには、9チーム(シカゴ、シアトル、カンザスシティー、ワシントンDC、ニューヨーク、ヒューストン、ポートランド、ボストン、ニュージャージー)が所属する。レギュラーシーズンは9月まで。
www.nwslsoccer.com

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佐藤美玲 (Mirei Sato)

佐藤美玲 (Mirei Sato)

ライタープロフィール

東京生まれ。子供の時に見たTVドラマ「Roots」に感化され、アメリカの黒人問題に対する興味を深める。日本女子大英文学科アメリカ研究卒業。朝日新聞記者を経て、1999年、大学院留学のため渡米。UCLAアメリカ黒人研究学部卒業・修士号。UMass-Amherst、UC-Berkeleyのアメリカ黒人研究学部・博士課程に在籍。黒人史と文化、メディアと人種の問題を研究。2007年からU.S. FrontLine誌編集記者。大統領選を含め、アメリカを深く広く取材する。

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